なぜ日本人は“美人すぎる●●”が好きなのか?郷好文の“うふふ”マーケティング(1/2 ページ)

» 2010年03月18日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotobike


 「美人すぎる元公務員がミスユニバース優勝

 これは大分県在住の板井麻衣子さんが、2010年のミスユニバース日本代表に決定した日の日刊スポーツ(2010年3月10日付)の見出しである。板井さんは2009年末まで大分市役所に勤務していた美人すぎるパブリックサーバント(公務員)。ミスには馴染みのなさそうな職場とのミスマッチ感から、この見出しになったのだろう。

ミス・ユニバース・ジャパン公式Webサイト

 釣られて、つい動画までじっくり観てしまったじゃないか。「和っぽい美人じゃん」「元公務員ねえ……」。男は美人に弱い。私も弱い。「美人なのか」「美人すぎるのか」と、日刊スポーツの見出しから画像・映像ニュースへ行き、ブログに書いたり、Twitterでつぶやいたりというような連鎖が生まれている。それにしても「美人すぎる●●」フレーズ、賞味期限が長いなあ。

美人すぎる●●フレーズの魔力

藤川ゆりDVD love navi 八戸

 「美人すぎる公務員」には、その職能標準から逸脱した価値がある。世間の持つ公務員への印象は「高学歴」「マジメ」「地味」「長時間労働」「薄化粧」の合体的なものであり、容姿は評価基準にならない。「どこそこの会社の受付嬢は……」という会話は成立するが、「●●市役所の案内係は…」という話はあまり聞かない。退職してミスユニバースに挑戦するだけでも衝撃の事件性がある。さらに選抜されたことで、公務員業界に衝撃が走った。

 「あたしたちもやれるかも」「ウチの役所にもいる」

 今後、美人すぎる公務員が各地で発掘され、市役所の窓口が混雑しないとも限らない。そんな二次ブームの予言はテキトーだが、DVDまで発売した八戸市議会議員の藤川優里さんを振り出しに、美人すぎる海女、美人すぎる釣り師、美人すぎるバイオリニスト、美人すぎるウクライナ首相などずらり。このフレーズにはなんだか魔力がある。

 なぜ「美人すぎる●●」に私たちはひかれるのか? どうやら日本人の深層美意識にも突き当たるようなのだ。美人を売るマーケティング・コミュニケーションを理解し、日本人の感性を知る良い事例。どうか付いてきたまえ。

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