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» 2010年03月24日 08時00分 公開

「エキナカ自販機で缶コーヒーがタダ!?」が示す可能性それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

[金森努,GLOBIS.JP]
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新しい自販機の可能性

 その名の通り、mediacureはデジタルサイネージも含めて全体として交通広告媒体であることは間違いない。無料配布とサイネージでの広告放映に関してはメーカーから広告料を得て、それで本来の飲料販売機会の消失を補填(ほてん)しているという。しかし、本質的にJR東WBの狙いは「自販機とデジタルサイネージの親和性を検証し、より双方向な新たな自販機のカタチ、可能性を追求すること」(同社広報)にあるという。

 このあたりは同社の強みを背景としている。現在、自販機のほとんどは飲料メーカーが自社の製品販路として展開している状態だ。各メーカーの商品が混載されているように見える自販機も、運営会社に飲料メーカーの資本が入っているため、実際には取扱商品にメーカー系列の偏りがある。まったく飲料メーカーの資本が入っておらず、「消費者が買いたいモノを並べる」というスタンスで展開しているのはJR東WBのみなのだ。

 同社は「広告として配布や放映をするのではなく、あくまで小売業として、消費者が購入したいものを優先する」という。そして「メディア事業は副業であり、あくまでも飲料及び飲料自販機を通じ、先進的小売業を目指したいと考えている」と言い切っている。

 つまり、「駅を利用するターゲット層に合わせた品揃えが可能」という強みを生かし、サイネージスペースは、広告収入を得るためではなく、あくまで自販機で商品を買ってもらうための販促に利用する狙いだろう。

 時間帯や利用する場所に合わせて、ターゲットに合わせた飲料の広告を打つ。小売店のPOPやスーパーマーケットに置かれたサイネージと同じように、購買意欲をあおる。スーパーマーケットのサイネージではすでに効果が出ている例も多数報道されているから、今回の先進的自販機やサンプリングも十分に可能性があると言えるだろう。

 さて。以下は少し余談になるが、同社はもう1つ、明確なポリシーがあるという。「現在のところ飲料以外の商品サンプリングは考えていない。というのも、『自販機で飲料以外を』というメーカーさんからの要望は結構あるのですが、我々は飲料会社として飲料にこだわっているので、ポリシーとして飲料以外の商品には手を出さないことにしている」(同)

 この点はあくまでポリシーということなので仕方ないが、少しだけ残念な気がする。

 例えば、現在ガムの「クロレッツ」が「オフィスサンプリングキャンペーン」を行っているという(COBS ONLINE)。ガム100個入りのパックが2箱届いて、それをオフィスで配布してくれる人を募集するという。「ちゃんと配布されるのかしら?」とお節介ながら心配になってしまう。

 また、実はオフィスでつまむお菓子としては、実はガムはあまり用いられていないという調べもある(Business Media誠)。チョコレートがダントツ。続いてアメ、せんべい、ビスケットに続いて、ガムはなんと5番目だ。製菓メーカーのガム担当者に以前、取材したところ、「ガムは移動中に用いられることが多い」と聞いた。どうだろう、駅のホームでサンプリングができればバッチリではないだろうか。

 いずれにせよ、「mediacure」の駅ホームでのサンプリング、デジタルサイネージ自販機には、新たな可能性が満ちている。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。

「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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