有権者から“しっぺ返し”をくらうのは、民主党だけなのか藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2010年04月05日 07時58分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 ようやく、というべきか、とうとう、というべきか、自民党が瓦解しはじめたように見える。参院選が近くなってきたので、自分の議席を心配する議員が増えてきた。自民党のままではとても戦えないとは思っていても、「受け皿」がなくては身動きが取れない。そんな議員を糾合する絶好のチャンスということなのだろう。与謝野馨元財務相が自民党を離党し、郵政総選挙のときに自民党の公認を得られず無所属となっている平沼赳夫元通産相や園田博之元幹事長代理とともに新党を結成する。先に離党した鳩山邦夫元総務相や舛添要一元厚生労働相も合流することになるのだろうか。

 こういった動きに対して、自民党の現執行部は何もできないでいるように見える。谷垣禎一総裁は「団結」とか「結束」というばかりで、自民党をどう再生しようとしているのかが全く見えない。よく「健全な保守」とも言うが、それがどのような政策を指すのか、これまでの自民党とどう違うのかが分からない。民主党の財政赤字を責め立てるのならば、自分たちが過去20年近くにわたってやってきた壮大なバラマキをまず総括しなければなるまい。そこがないから、鳩山政権を攻めても迫力に欠けるのである。

支持基盤にがんじがらめにされる民主党

 こうなってくると、有権者にとってはまたまた難しい選択になるだろう。去年の総選挙で民主党を圧倒的に勝たせたことについて、いわゆる浮動層の多くは、「今回は民主党に勝たせたくない」と思っている。つまり民主党に単独過半数という「お墨付き」は与えたくないということだ。いまでも連立与党は全部で127議席(過半数は122議席)しかないから、ちょっと議席が減ればたちまち一頃の衆参ねじれ現象が再現してしまう。こうなったら民主党は二進も三進も行かなくなるだろう。

 いま支持率が伸びているのは渡辺喜美元国務相が率いる「みんなの党」だ。第三極宣言をして民主党に対して挑戦状を叩きつけている。今年の参議院選挙でも候補者の数次第ではふたケタ当選が確実ともされている。

 民主党が政権を取ることで、日本もようやく二大政党制の時代に入ったという感じを持った人も少なくなかったと推測する。そしてこれまでのどうしようもない閉塞感も消え、一歩前進できるという期待もあった。

 しかし民主党はこれまでの自民党政権とどこが違うのか、日を追うごとに分からなくなっている。国の予算を自分たちの票を集めるために配分する様は、まるで自民党だ。おそらくは選挙で勝たなければ、きれい事をいくら言っても日本を変えることはできないということなのだろう。

 この考え方は、根本的に間違っていると思う。自民党の支持基盤であった組織をまるでオセロゲームのようにひっくり返せば、確かに選挙には勝てるかもしれないが、結局はその支持基盤にがんじがらめにされてしまう。しがらみにとらわれるだけなのである。

 郵政民営化の見直しを考えてみれば分かることだ。何のための郵政民営化だったのか、何のための見直しなのかという議論は尽くされないままに、結局は国によるコントロールを残すこと、そして郵貯や簡保の限度額引き上げなどという票に対する「手土産」が決まっていく。その結果、民主党は特定郵便局長会の票を得ることができるが、日本の金融はまた著しく歪められてしまう。公務員の人件費の2割カットにしても、労働組合をバックにしていれば、よほどの覚悟をしない限り実現は不可能だろう。

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