iPadの分解結果が示す、既存の調達・購買管理論の終焉(1/2 ページ)

» 2010年04月14日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中ノ森清訓(なかのもり・きよのり)

株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。


 米調査会社iSuppliがiPadのテアダウン(tear down)結果を発表しました。テアダウンとは、ティアダウン、リバースエンジニアリングとも呼ばれ、製品開発などに用いられる手法で、競合他社の製品を分解し、そこから、設計、部品やそのサプライヤの情報を入手するものです。

iPad(出典:Apple)

 同社の4月7日付プレスリリースによると、499ドルで販売されている16ギガタイプのiPadの製造原価の内訳は以下の通り。

製造原価内訳 メーカ 価格(ドル) 価格構成比
液晶ディスプレイ LG Display(韓国)他 65 13%
ガラスパネル Wintek(台湾) 30 6%
ケーシング他 32.5 7%
バッテリー Amperex(香港)他 21 4%
プロセッサ Samsung(韓国) 19.5 4%
モバイルSDRAM Samsung(韓国) 7.3 1%
無線LAN Broadcom(米国) 11.75 2%
スクリーンドライバー TI(米国) 1.8 0%
オーディオチップ Cirrus Logic(米国) 1.2 0%
電源回路1 Dialog(独) 2.1 0%
電源回路2 Samsung(韓国) 1.25 0%
NADA Flash Samsung(韓国)他 29.5 6%
その他 27.7 6%
部品原価計 250.6 50%
製造 9 2%
製造原価 259.6 52%

 ここで注目されるのが、この中に日本企業の名前がないことです。液晶ディスプレイでセイコーエプソン、フラッシュメモリで東芝がサプライヤとして含まれているのですが、それらのメインサプライヤではないようです。また、バッテリーのAmperex TechnologyはTDKの子会社ですが、これは、 2005年に香港企業を買収したものです。Appleという米国企業1社の製品のことなので当てにならないかもしれませんが、この背景には、自動車と並んで日本の製造業の象徴であった電子部品で、日本企業のグローバルメーカーとしての競争力に陰りが出てきていることがあるのではないでしょうか?

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