グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。
※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年4月23日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。
カップ焼きそばの不動の3強といえば「日清焼きそばU.F.O.」(日清食品)、「明星 一平ちゃん夜店の焼そば」(明星食品)、「ペヤングソースやきそば」(まるか食品)であった。その一角に食い込み、切り崩すことに成功したのだ。
「若者にうけた? “縦型カップ焼きそば”売れ行き好調 〜販売個数TOP3に食い込む」(4月19日oriconグルメ)
記事では、日経POSデータを紹介。3月15日の発売週はトップの「焼きそばUFO」次ぐ販売個数を記録。4月に入ってからも「一平ちゃん夜店の焼そば」と競い合いTOP3に食い込むという好調さだという。
同商品はエースコックが2年の歳月を費やして開発した、「若者向けカップ焼きそば」であると、同社ホームページの開発ストーリーにある。開発のきっかけは、「10〜20代の食用率の低下」だったという。
商品の2つの大きな特徴は、「縦型容器」と「ソース練り込み麺」だ。
まず、容器については、カップ焼きそば市場30余年の歴史の中において、ほとんどの商品が角形、もしくは円形の平型容器を用いてきた。それに対して、若者の評価は「持ち運びが面倒」「容器が大きくて食べにくい」という不満を持っていた。
例えば、従来の平たく大きな容器はデスクに置くとパソコンのキーボードを片付けなくてはならない。縦型にしたことで手軽に食べられ、何か作業などをしながらの「ながら食べ」にも対応できたという。
味は、食生活の変化から「濃い味を好む」若者の嗜好に対応した結果、従来のように味付けソースを添付するだけでなく、麺の中にソースを練り込んだのだという。
「JANJANソースやきそば」は「10〜20代の食用率の低下」に対応して、若者をターゲットに、「うける」商品を開発したということから、ちょっと考えると、よくある「若者の●●離れ」に歯止めをかけた成功例にも見える。
「●●」は「クルマ」「ビール」に始まり、もはや枚挙にいとまがないくらいにメディアに取り上げられ、消費低迷の原因の一端のようにも言われる。それに対してネットでは「まぁ〜た始まった」という反論がなされる。今回も一部でそのような書き込みが散見される。
しかし、「JANJANソースやきそば」の真の価値は全く異なるのだ。
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