質の良いジョークがビジネスにもたらすメリット(1/2 ページ)

» 2010年05月07日 08時00分 公開
[三宅信一郎,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:三宅信一郎(みやけ・しんいちろう)

BFCコンサルティング社長。北海道大学経済学部経営学科卒業後、大手総合商社、コンサルティング会社、IT企業において長年に渡り、一貫して新規ビジネス開発分野に関わる。


 2年前、麻生太郎前首相がニューヨークの国連総会で演説を行った際、途中で通訳機器が故障し、冒頭からやり直すハプニングがあったことをみなさんは覚えているでしょうか?

 開始から少し経って、日本語で演説を行っていた麻生さんのところに国連大使が壇上に駆け寄り、機器が故障していることを耳打ちすると、麻生さんはすかさず英語でこう言いました。

 「メード・イン・ジャパンじゃないからこうなる」

 会場は大きな笑いと拍手に包まれ、終了後には何人かの出席者が「いい演説だった」と麻生さんに駆け寄って祝福したことがありました。それによって国連総会という堅い雰囲気の場が一気に和んだようでした。

 日本人はとかくまじめな場所に出ると、緊張のせいか、気の利いたジョークで場を和ませることが下手なのですが、この麻生さんのケースは「なかなかのものだ」と感心したことを思い出します。

それは職業上の秘密です

斉藤孝著『コメント力』(筑摩書房)

 斉藤孝著『コメント力』(筑摩書房)に優れたユーモアの例がいくつか出ていたので、「これは面白い」というものを紹介しましょう。

 カリフォルニア州知事であるアーノルド・シュワルツェネッガ―氏が知事選を戦っていた際に、遊説先で観衆から突然生卵をぶつけられた時に、生卵をふきながら言ったひと言。

 「やつにはベーコンの貸しだ」

 周りの人は誰もが「何するんだ。このバカ野郎!」と怒鳴るのではないかと戦々恐々としていたのですが、この意表をついた切り返しで周りの人は大笑いになったということです。「なぜベーコンか」というと、卵をくれるのならついでにベーコンもよこせよ。 でないとベーコンエッグができないじゃないかということなのです。

 このようにユーモアは、ある種の緊張感のなかで発せられた意外性のあるひと言から生まれるのです。以下のジョークは、意外性に満ちたジョークです。

 泉重千代さんが長寿世界一になった時、インタビューで「好みの女性は?」と聞かれて言ったひと言。

 「年上の女」

 昭和天皇が、記者から「好きな力士は?」と聞かれて返したひと言。

 「それは職業上の秘密です」

 天皇ご自身が、天皇を職業だと言い切っている意外性がとても面白いです。

 意表を突いたジョークで面白いのは、元関脇の蔵間が、記者から「なぜお相撲さんは頭にまげをのせているのですか?」と聞かれて、答えたひと言。

 「さあ、あれがないとただのデブと区別が付かないからじゃないですか?」

 記者は、まげの歴史的由来やしきたりなどの話を期待していたので、意表を突かれ、周囲にいた人たちは大爆笑したようです。

 ユダヤ関係の本にも、多くのジョークが出ています。ユダヤ人は、ご存じのように長い歴史を通じて迫害され苦難の道のりを歩んできました。その苦難の過程で、優れたユーモアが生み出され、それによって極度の緊張感から解放され、自らを逆境から守ることができました。彼らにとってジョークは、自らを守る最強の精神的な武器だったのです。

 加瀬英明著『ユダヤの力』(三笠書房)に次のようなジョークが出ていました。 ユダヤ教の宗教指導者のことをラビと言いますが、その宗教指導者でさえジョークのネタになっているのです。

 「神の教えから一度たりとも外れることなく天寿をまっとうしたある高潔で高名なラビが天国に着くと、顔見知りであった運転手ヤコブに会いました。

 ヤコブは生前大酒飲みで女性関係にだらしがなく、いつも博打にふけっていました。それなのに、彼は、広大な宮殿で多くの天使にかしずかれて実に優雅な暮らしをしているのに対して、ラビには小さくて粗末な家しか与えられていませんでした。

 不満に思ったラビは天使に『何かの間違いではないのか?』と問い正したところ、天使は、ラビに対して神の言葉を伝えました。

 『あなたが説教している間、人々はいつも眠っていましたが、ヤコブが運転している間は、誰もが神に熱心に祈りました』」

 こうしたジョークを知ると、何かとっつきにくい印象のあるユダヤ教も、急に親しみを持てる存在になったような気がします。

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