オーストリアに学ぶこと……それは林業のチカラ松田雅央の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年05月25日 08時38分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

無駄のない木質バイオマス利用

 製材所も集約化が進み小規模家族経営の製材所は経営が苦しいそうだが、それでもオーストリアの田舎では小さな製材所ががんばっている。木材は特に隣国イタリアへの輸出が盛んだが、国内消費も旺盛で木材建築ひとつとってもその質の高さを垣間見ることができる。

 写真1は一種のログハウスであるが、丸太を組み合わせたものではなく角材を組み合わせて建てられたもの。キャンピング場などに建つ特別の建物ではなく、ごく普通の農家の母屋である。一般的な「木造住宅」のレベルを遥かに超えた「純木造住宅」であろう。

 オーストリアにおいて林業が盛んになった理由は、その自然条件に負うところが大きい。平地の少ない自然条件の中で行なえる代表的な第一次産業は「林業と畜産」。今も林業と畜産を兼業する中小農家は多く、彼らは自分で木材の切り出しまで行なってしまう。牛乳の卸売価格が極端に安い昨今、中小農家にとって林業の魅力は相対的に高まっている。

 林業のさらなる追い風が、木質バイオマスの需要拡大と公的補助の拡充である。これまでは薪にするしかなかった端材、枝、そして利用価値の乏しかった樹皮といったものをチップにすれば木材燃料として価値が生まれる。小型の木材チッパー機を木材切り出しの現場へ持って行きその場でチップにしてしまうから、林業のゴミ「林地残材」が残らず、健康できれいな山を保つことができる。

純木造住宅(写真1、左)、森と牧草地が組み合わさった、チロル地方の典型的な農村風景(右)

伐採風景(左)、小型の木材チッパー機(右)

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