突然だが、あなたは以下の2つの問いに答えられるだろうか。
Q1. 1秒の長さは、どうやって決められているのでしょうか。
Q2. 日本標準時は、どうやって決められているのでしょうか。
1日は24時間だということに異議を唱える人は少ないと思う。そこで、「1日=24×60×60=8万6400秒だから、地球が1回転する時間の8万6400分の1が1秒だ」という解答が得られるかもしれない。残念ながらこれは間違いだ。
また、日本標準時というのは、英グリニッジ天文台の子午儀の中心を通る本初子午線を基準にしたグリニッジ標準時(GMT:Greenwich Mean Time)に、時差の9時間を足したものだと思っていると、これまた間違いとなる。
どうやら子供のころに学校で習った時間の知識は、今日では異なってしまっているようだ。正解を聞くために、日本標準時を運用している独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)を訪問した。
→日本最古の時計はこちら「日本の時計の歴史をたどる旅――滋賀県・近江神宮」
東京都小金井市にあるNICTは、情報通信技術に関する研究や事業支援を行っている。また、電波法に基づいて国内で利用される電波の周波数標準値を設定したり、標準電波を発信することで日本標準時(JST:Japan Standard Time)を通報したりする、唯一の機関だ。
今回、お話をうかがったのは、第一研究部門 新世代ネットワーク研究センター 光・時空標準グループの研究マネージャーを務める岩間司工学博士。光・時空標準グループは4つの重要なプロジェクトを行っている。
そのプロジェクトとは、日本標準時の発生や標準電波(JJY)の発信を行う「日本標準時プロジェクト」、“1秒”の定義を正確に実現するために超高精度な原子時計の開発を行う「次世代時刻周波数標準プロジェクト」、電波や光を用いて空間を精密に計測する技術の研究を行う「次世代時空計測プロジェクト」、人工衛星を用いた時刻管理系の開発を行う「衛星時空計測プロジェクト」の4つだ。
何やら、難しそうなキーワードがたくさん並んでしまったが、要するに「1秒」を定めて、日本標準時(後述するが、世界の時刻を定める協定世界時の生成にも大きく寄与している)を通報しているのだ。
「秒の定義は1967年に、それまでの天文系から原子系に変わりました。それは、計測の精度が向上したために、時間に関するズレが大きくなってきたからです。地球の自転運動に基づく世界時は1秒の長さが一定ではないのです」(岩間博士)
今日、「1秒はセシウム133が91億9263万1770回振動する時間※」と定められている。そして、1秒を測定するのが原子時計であり、NICTでは18台のセシウム時計と4台の水素メーザーから得られた結果を合成して“1秒”を生み出している。その誤差は数十万年に1秒といわれている※※。
原子時計によって刻まれる時間を原子時といい、1958年1月1日0時から国際原子時(TAI:Temps Atomique International)がスタートした。TAIは、NICTを含め世界中の原子時計の加重平均によって国際度量衡局(BIPM)が決定している。ちなみに、NICTは寄与率第2位(世界1位は、GPSシステムで利用される時間を通報している米海軍天文台)という成績を収めている。
厳密な1秒を刻み続ける原子時と、地球の自転を基準にした世界時にはズレが生じてくる。それを補うのがうるう秒だ。2009年1月1日に、午前8時59分60秒が発生したことを覚えている方も多いかもしれない。
うるう秒によって調整した時間が、協定世界時(UTC:Universal Time, Coordinated)と呼ばれる。TAIには、これまで24回のうるう秒調整が発生し、UTCはTAIに対して34秒遅れている。このUTCに対して、9時間の時差を加えたものが日本標準時となる。厳密なものではないが、NICTのWebページでもTAI、UTC、JSTを表示している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング