そもそも立地とは何だろうか?
都市計画法で定められた「用途地域」という言葉を聞いたことがあるだろうか。住居専用地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域など、市街地を用途で大枠にくくって、開発促進または制限をかける。住むところ、売るところ、働くところを分離して、生活に秩序と利便をもたらすのがその目的だ。
この区分をベースにして、自治体では「近隣商業集積ゾーン」「地域商業集積ゾーン」「広域商業集積ゾーン」などゾーニングをして、開発計画を作る。従来のエリアマーケティングとは、都市計画図をにらんで、用途地域やゾーニングをアタマに入れ、商圏吸引の計算をして(教本にあるハフモデル※やライリーの法則※※)、商業集積や交通動線に変化を創ることだった。
大型量販店の駅前出店はその典型例で、地元商店街とのあつれきを乗り越え、「来街者の回遊」「みんなもうかる」という相乗効果をあげて、もうかる立地を創造。地域の利便性や価値を上げてきた。だが、少子高齢化・低成長時代に入り、リーマンショックが起きてから「もうかる街作り」という常識が怪しくなった。
そのため都心でも、何でもない立地が発生しているのだ。
今、都心ターミナル駅前は、不振業態(百貨店)を居抜きで買い取りまたは借り上げ、店舗投資をする“メガストア立地”の争いである。我がふるさとである池袋は、キンカ堂も三越もつぶれ、家電量販店が群雄割拠するメガストアタウンとなった。栄枯盛衰は世の習いとはいえ、電器ばかりの街はつまらん。いや、問題はつまらんだけではない。
メガストア出店で池袋の商業立地としての魅力は増したのか?
メガストアの持つ顧客吸引力で買い物客数は増えた。だが、メガストア立地で、街としての魅力、立地としての魅力が増したとは言いにくい。メガストアのお隣の立地、裏手の立地の魅力は増しただろうか? メガストアのすぐ隣なのに、何でもない立地が増えていないだろうか?
もっと分かりやすいのは郊外ショッピングモールである。その多くは工場跡地、操車場跡地、原っぱなどを再開発。1日何千台もの自動車客を誘引して需要を創造する。だが、その施設だけが商業地域であり、隣地は商業地域とは言いにくく、ぺんぺん草さえ生えていない何でもない立地だったりする。
都心部の何でもない立地はまだ救われようもある。だが、地方の状況はひどい。マクドナルドさえ撤退して、閑散とした地方の駅前の風景はもの悲しい。シャッター商店が1つ増えるたびに、商店街は“街”でなくなる。ロードサイドの廃業が増えるたびに、商業道路ではなくなる。商業立地が何でもない立地になるのが問題なのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング