ある編集者は言う。「ライターは下請け、著者はアホでも著者様」と吉田典史の時事日想(3/4 ページ)

» 2010年06月25日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

ライターは下請け、著者は“アホでも著者様”

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 ライターの彼は、“虚栄心の塊”ともいえる経営者の取材を4カ月近くかけて終えた。通常、このような取材は1カ月半くらいで終えるが、著者や編集者はおわびすらしなかった。本のプロジェクトがスタートし、10カ月近くも経っていたが、この間、ライターには1円も支払われていない。著者とそれをコントロールできない編集者の不手際でありながら、だ。また、この編集者は「ライターは下請け、著者は“アホでも著者様”」と話していたという。

 トラブルは、その後も続く。ライターは収録テープを聞いたものの、話の流れがメチャクチャだったので、原稿にすることができなかった。彼は編集者の了解をとったうえで、創作に次ぐ創作を試みた。そして原稿にまとめ上げたが、読み直すと、内容があまりに薄い。編集者と話し合い、図や表などを原稿に盛り込んだ。こうでもしないと、200ページには達しなかったからだ。編集者は自分で経営者を著者に選んでおきながら、「どっひゃーん! 史上最悪!」と嘆いたようだ。

 さらに事態は一段と悪化する。なんと今度は、経営者が「音信不通」になったのだ。当初、1カ月以内に原稿を確認することになっていたが、「忙しい」とか「体の具合が悪い」と言い始めた。嫌な予感がしたという編集者は、何度か催促したが、返事はなかった。

 経営者は4カ月近く「音信不通」だったが、ある日突然、編集者に連絡してきた。「一段落したから、始めたい」と言ってきたが、これには、さすがに呆れ返ったという。少し厳しい物言いで受け答えをしたところ、小競り合いになり、ついに経営者がキレた。この日以降、一切、接触を断ってきたという。

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