インタビュー:ニコラ・ニコロフ「ポスト・フォッシル」展より

» 2010年06月28日 08時00分 公開
[草野恵子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

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※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展。かわいらしいけれども、圧倒されるくらい巨大なうさぎ「ザ・ホワイト(ジャック)ラビット」が、会場の一角で出迎えててくれる。近づいてよく見ると、うさぎを形成しているのは木製の家具だということに気づく。

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 まるでマジックのように、古い物を使って新しい形と命を吹き込んでみせる作家のニコラ・ニコロフ氏(スタジオ・リ・クリエーション)に、話を聞いた。

今回の展覧会に出品した作品について、発案から実際の製作までの期間、この素材を選んだ理由を教えてください。

 制作期間は1週間ほどですね。作品のコンセプトは、私のスタジオの名前にもなっている「リ・クリエイション」です。作品の素材は、古い椅子4脚と2つのベビーベッドですが、これは単に「リサイクル」ということだけではありません。私はさまざまなピースを組み合わせながら、依頼者の個人的な感情、古い想い出を大切にしたいと思っているのです。

 それと、この「ザ・ホワイト(ジャック)ラビット」には、「アリス・イン・ワンダーランド」に登場するいたずら好きな白うさぎのイメージも重ね合わせています。

21世紀に入って10年が経とうとしています。今後、デザイナー、アーティスト、クリエイターが担うべきこととはどんなことだと思いますか?

 この質問には、僕にとって非常に大切な3つの言葉でお答えしたいと思います。「awareness(知ること)」「respect(敬意を払うこと)」「responsibility(責任)」です。僕からのメッセージとしては、すべてのオブジェクトについて、どういう素材、どういう過程で作られてきたものなのかを知る必要があると考えています。「ポスト・フォッシル」展はこの3つの点を完璧に満たしていて、まるでパラダイスのようです(笑)。創作活動は、すべてこの3点と密接につながっていると思います。

1人のクリエイターとして、未来のデザインはどうなると思いますか?

 いまはデザイナー、アーティスト、クリエイター、ペインターと分かれているけれど、今後は1つになっていくだろうと思います。私は絵も描きますし、デザインもしますし……。いろんなことを手がけています。私の次のプロジェクトは、ファッションコレクションなんですよ。これも異なる素材を使ったものになるはずです。最も大切なことは顧客からの希望を聞くこと。そして、それを元にリサイクルはもちろんですが、それ以上のことを生み出し、提供していきたいと考えています。

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 インタビュ―の最後に、彼は、2010年のミラノサローネで発表した作品「The Transformer」の写真を見せてくれた。この作品は、彼がいちばん最初に乗っていた車「Lada Samara Diva」の素材を使って作り上げた、等身大のフィギュアというべきもの。実に人間的な表情をみせる「The Transformer」は、新しい命を確かに持っているように感じられた。

Studio-Re-Creation(Nikola Nikolov)

スタジオ・リ・クリエーション(ニコラ・ニコロフ)

アーティスト。1972年生まれ。オランダを活動拠点とする。仕事を通してアートとクラフトとデザインの面白いバランスを追求している。スタジオ・リ・クリエーションは無用物や廃棄物に新たな形を見いだすことによって、それらを象徴的なアートおよびデザインオブジェへと変容させている。インテリアデザインとアートの中間で機能しながら、スタジオ・リ・クリエーションのほかにはないプロダクトは顧客にとってきわめてパーソナルなものである。素材のリサイクル、リユース、リペア以上のことをしており、さもなければ放置されるか廃棄されてしまうような持ち物や思い出の保存を手助けする。


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