40歳以上をリストラすれば問題がすべて解決するのかと言えば、私はそこまで単純でないと考えている。少なくとも、大企業の経営者層はもっと大胆なことを行っているように思える。彼らがいま狙うのは、企業の事業戦略と人事戦略の一致である。
日本企業は長い間、事業戦略と人事戦略が一致していないと指摘されてきた。そうなると「景気がいいと大量採用、悪くなると減らす」というどんぶり勘定になってしまう。これでは、人件費の構造を適正にすることはできない。
そこで事業責任を明確にするために、事業戦略と人事戦略を一致させようとする。ところが、この場合は40歳以上という年齢ではなく、不採算部門や採算のあわない子会社などをリストラの対象にせざるを得ない。
つまり、年齢という「縦」軸ではなく、採算があわない部署、つまり「横」軸のリストラとなる。こうなると、30代もその対象となる。大企業では、この「横」のリストラがここ1〜2年、急速に進んでいる。私の取材先の会社(大手メーカー、大手情報通信機器販売)でも、不採算部門の30代社員が退職に追い込まれている。一方で、採算が合う部署にいる「ふつうの成績」の40代は残ったままだ。
不採算部門であっても、まだ将来がある30代ならばほかの事業部で受け入れるようにすることも考えられる。こういうパターンで異動を認める会社はあるが、少ない。いまは大企業で事業部制がかなり浸透してしまっているから、その30代社員らをスムーズに異動させることができないのだ。
言い換えれば、この人たちを引き取る部署がいくつもあるわけではない。ましてや、1990年代後半から、多くの会社は「プロフェショルであれ!」とその職業のプロであることを社員に求めた。こうなると、ますますほかの職務に移すことが難しくなる。誤解がないように言えば、仮に移ったとしても、若い人も年を取ればリストラの対象になることはありうる。なお、このリストラの場合、採算が合う部署の20〜30代はそこに残る可能性は当然、高い。
30代の社員は、今後もこういう40〜50代の社員の面倒を見ることになる。ちなみに、私も40代前半である。
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