Googleのユーザー至上主義から学ぶ企業プロモーションの在り方デジタルPRの仕掛け方(2/3 ページ)

» 2010年08月12日 08時00分 公開
[野崎耕司(ビルコム),ITmedia]

戦略的に情報を拡散させるデジタルPR

 デジタルPRの実現に向けた次のステップは、「デジタルメディアを軸にした戦略的な情報の広がり」を作り出すことだ。

 Google“さがそう”キャンペーンではまず、Googleの自社サイトでYouTubeへの動画投稿を募っている。YouTubeというソーシャルメディアは、口コミ情報を拡散させる導火線だ。

 YouTubeに投稿された動画の評価指標は、(a)再生回数、(b)ユーザーによる評価、(c)ユーザーによるコメントの数とその質、(d)検索キーワード、検索結果とストーリーの連続性、関係性の高さ、(e)ストーリーの分かりやすさ、ユニークさ――である。これを基に最優秀作品が選ばれる。

 ここで注目したいのが、(a)再生回数、(b)ユーザーによる評価が、最優秀作品の選定条件に挙がっていることだ。これにより、動画の投稿者はブログやTwitterで情報を広め、話題作りをしようとする。評価者の立場であるユーザーは、共感した動画に対するコメントや意見を発信するだろう。その結果、情報は一気に拡散しソーシャルメディア上を駆けめぐっていく。

 この過程を経た最優秀作品が、テレビCMとして放映される。マスメディアが発信した情報はユーザーの関心を誘い、口コミ情報が再びオンライン上に拡散していく。

 つまり、同キャンペーンでは、マスメディア、ソーシャルメディア、そしてGoogleの自社メディア上で情報が行き交い、拡散する仕組みが構築されているのだ。

情報の質を追求するGoogleのプロモーション

 Googleのキャンペーンは、消費者視点に立ったコンテンツの発想、そしてデジタルを軸にした戦略的な情報の拡散という視点で、優れた手法を取り入れているデジタルPRの事例だ。消費者にメッセージを届けようとする企業にとって、Googleのアプローチは学ぶべき点が多い。

 企業の広報/マーケティング活動において、デジタルPRの視点が求められるようになっている。その背景には、デジタルメディアの発達に伴う情報量の圧倒的な増加がある。ユーザーは情報の「量」よりも「質」を重視するようになってきている。

情報量流通の推移 情報量流通の推移。増え続ける情報に対して人間の処理能力が追いついていないことが分かる(総務省 平成18年度「情報流通センサス報告書」より)

 これに伴い、企業は従来以上に消費者が関心を持つ情報作りを心掛けていく必要がある。そして「質」にこだわった情報とは、「消費者視点に立ったコンテンツ」を指す。

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