「トヨタ、残業解禁へ」のウラにあるもの(1/2 ページ)

» 2010年10月01日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中ノ森清訓(なかのもり・きよのり)

株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。


 「トヨタ自動車が、ベテランや中堅社員が若手を指導できるよう、2009年5月まで上限を1カ月10時間、同年6月以降は原則禁止としていた事務・管理部門の残業の制限を撤廃した」(出所:2010年9月25日、日本経済新聞1面)

 トヨタが残業を制限していたのは、金融危機後の業績悪化を受けた固定費削減のためとのこと。確かに残業時間を制限すれば、見た目の固定費は一時的に減る。しかし、仕事そのものがなくなったわけではない。基本的には従業員のサービス残業が増えるか、必要な仕事がなされなくなるかのいずれかである。

 この記事では、所定の時間に業務を終えなくてはならないベテランや中堅社員が、若手を指導する余裕がなくなっていたことが、制限撤廃の要因として指摘されている。

 「また、トヨタは今春から技術開発部門で、5人程度の部下を管理・指導する「係長職」を約20年ぶりに復活させた。組織のフラット化で減っていた現場の指導役を増やすのが狙い」(出所:日本経済新聞、同上)

 トヨタは2009年末から2010年初頭にかけて、国内外で大規模なリコールを行うなど、これまで絶対を誇っていたその品質管理の陰りが懸念されている。その要因の1つとして、ここ数年のグローバル化による急激な事業規模の拡大に、人材育成が十分に追いついていないことが挙げられていた。

 こうした収益、コスト削減を過度に追求するあまり、必要な人材育成が行われなくなっており、それが会社のあちこちでひずみをきたしているとの懸念が、トヨタの人材育成への投資を後押ししているようだ。

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