フラフラの民主党が、財政再建を実現できるのか藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2010年12月06日 09時54分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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財政再建に取り組まない政治家たち

 ひるがえって日本を見ると、民主党政権は歳出カットはおろか増税についてもまったく及び腰になっているようだ。国家公務員の人件費を20%カットというかけ声は勇ましかったが、来年度については人事院勧告の1.5%賃下げに上積みすることすらできなかった。消費税増税を唐突に打ち出して参議院選挙で大敗したために、消費税論議はすっかり影が薄くなってしまった。

 菅政権は来年春ごろまでしかもたないという観測が強まってくれば、なおさら増税や歳出カットによる財政再建という話は遠のいてしまう。菅政権がもし総辞職ということになってまた民主党の中で首相の座をたらい回しするということになったら、いよいよ民主党の支持率は下がる。そうなったらまた総選挙になる可能性もあるだけに、地方への予算分配という武器は捨てられない。

 英エコノミスト誌の最新号に面白い記事が載っていた(関連リンク)。どこの国でも、財政支出の削減と増税は「政治的自殺」というのが通り相場だが、ハーバード大学のアルベルト・アレジーナ、カリフォルニア大学バークレー校のドリアン・カローニ、ニューヨーク大学のジアンパオロ・レスの共同論文によると、過去の事例を研究すると必ずしもそうした見方は正しくないのだという(関連リンク)

 ここでは1975年から2008年までの33年間でOECD(経済協力開発機構)加盟国から19カ国を選んで研究している。その結果、財政再建中あるいは財政再建策を取って2年以内に行われた選挙で、現政権が負けたケースは37%だった。この間に行われたすべての選挙で現政権が負けたのは40%だから、歳出カットと増税という国民に不人気の政策を取ったからといって「政治的自殺」というほどのことはない。ただ財政再建といっても歳出カットと増税では「不人気度」に大きな差があるようだ。当然、増税のほうが不人気度が高いのである。

 もしこの「観察」が正しいとすれば、なぜ政治家は財政再建に取り組むことに尻込みをするのだろうか。論文の著者たちによると、政府の背後に利益団体が付いていると、支出カットがより難しくなるという。日本の民主党には労働組合という大きな利益団体がバックにいる。そういった組織が既存利益を守ろうとすれば、政権がいくら歳出カットを唱えたところで政策が打ち出せるはずもない。そして日本の累積赤字はいよいよGDP(国内総生産)の2倍に近づく。日本の国債が、ギリシャやアイルランドのような「ジャンク国債」になる日は目の前に近づいているのかもしれないのである。

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