第43鉄 「元レッドアロー」、アルペンルートを走る――富山地方鉄道杉山淳一の +R Style(3/6 ページ)

» 2010年12月06日 13時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

北陸本線との併走区間が楽しい!

 寺田を過ぎると2つの駅を通過。急行らしくなったなと思ったら、次の上市に停車。しかも、方向転換するという。山岳区間でもないのにスイッチバックをするらしい。こんな不自然な線路配置にはきっと理由がある。調べてみると、このあたりの路線変更の経緯はかなり複雑だ。思いきり要約すると、北の滑川方面からここまでの路線と、西の富山駅方面からここまでの線路が、さらに東へ行こうとして合流したところが現在の駅。この駅から先が廃止になったのでスイッチバック駅が残された……といういきさつらしい。

スイッチバックの上市駅

 小雨の降る中、急行電車の運転士さんがホームを歩いて移動している。あれ、そういえば立山線との分岐駅の寺田駅は富山側に合流するから、立山と宇奈月温泉を結ぶ特急「アルペン」は、短い区間でスイッチバックを2回も行うことになる。こちらも珍しい。西武鉄道時代の5000系は飯能でスイッチバックをしていた。5000系にはスイッチバックのための特別仕様なんてないけれど、スイッチバックに縁の深い電車だ。車内では座席の向きを変える音が響いている。背もたれを座面方向に押して回転するタイプ。最近はペダルを踏むタイプが多いから、この方式は珍しい。

 進行方向を変えた急行電車は北へ転進。北陸自動車道と2本の国道をくぐって北陸本線に並んだ。あちらは複線の幹線。こちらは単線のローカル線。駅の数はこちらのほうが多く、長距離輸送と地域輸送の役割の違いを示している。富山地鉄の電車とはときどきすれ違うが、北陸本線の列車はちっとも見えない。列車の運行本数はこちらのほうが多いかもしれない。と思ったら、北陸本線に大スターがやってきた。濃緑の客車と同色の機関車。ピンクのヘッドマーク。寝台特急「トワイライトエクスプレス」だ(参照記事)。昨日の午後に札幌を出て、大阪着は昼過ぎ。今頃は食堂車で朝食タイムのはず、いいなあ。

トワイライトエクスプレスが通り過ぎた

 北陸本線の南側の線路が、越中中村駅から先で少し離れる。電車が早月側を渡ってしばらく走ると、北陸本線の線路を潜って海側に出る。ここから先は魚津市内だ。急行電車は西魚津駅から各駅に停まる。海側の併走区間はすぐに終わって、北陸本線は緩やかに右へカーブ。富山地鉄は直進した後、電鉄石田駅から左に曲がり、勾配を上がって北陸本線を超える。海側へ行ったと思ったらまた戻る。なんでわざわざこんなことを……と不思議だがこれにもちゃんと理由がある。現在の電鉄黒部駅で、黒部鉄道と接続したのだ。

早月川を渡る
北陸本線を潜って……
今度は乗り越える

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