「釣女」「釣りガール」は本当に流行るのか!?それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2011年01月19日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2011年1月14日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


 「釣女」とかいて「ちょうじょ」と読む。歴史好き・歴史通の女性を意味する「歴女(れきじょ)」と同じ読ませ方だ。日経トレンディネットが2010年11月に2011年のヒット予測ランキングの4位として「釣女ギア(ちょうじょギア)」を示している。

 日経ウーマンオンラインも2010年11月17日付で「次の流行ファッションは、釣女、怪獣…」という記事を掲載している。記事中で、「“釣女”というよりも“釣りガール”と言ったほうが分かりやすいかもしれない」と、語感の悪さを修正しつつ、「『ランスカ』や『山スカ』など、アウトドア系の服がヒットし、次にくるのは釣りファッションというわけだ」「“山ガール”ではなく“釣りガール”ブームがくるかもしれない」とトレンドを予測している。

 上記の通り、女性のアウトドアのトレンドは「ランスカ」や「山スカ」など、ウエアから起こる傾向が顕著だ。そのため、「DAIWA」ブランドで知られる、釣り具最大手のグローブライド(旧ダイワ精工)は、人気のカジュアルブランド「A BATHING APE(ア・ベイシング・エイプ)」とコラボレーションした上、さらに佐藤可士和氏をクリエイティブディレクターに迎え、「A FISHING APE(ア フィッシング エイプ)」を立ち上げた。

 製品のデザインのポイントをZAKZAK(産経)の2011年1月4日付記事「ハマちゃんモテモテ?『釣りガール』がトレンドになる!」で、同社の広報課がコメントしている。「今春投入するウエアでは、派手なカラーリングで、丈を短くしたデザインにしたりして、女性を意識したものにしています」とのことだ。

 製品だけ作っても、当然売れない。販売チャネルでの展開にも注力している。同記事によれば、釣り用品販売大手のキャスティング(東京)は首都圏の大規模店舗で、「THE NORTH FACE」など人気のアウトドア用品ブランドを店の目立つ場所に配置。「釣具店というと女性にとってどうしても敷居が高くなってしまう。その敷居の高さを低くしたかった」(同社総務担当)とある。キャスティングは、実はグローブライドの子会社である。

 ブームがくると誰が得をするのか。シェアナンバー1の企業だ。それがグローブライドである。同社は精密機器のメーカーであるが、釣り具セグメントの売り上げが極めて大きい。2010年5月の発表では、売上高623億円のうち、釣具部門が486億円(78%)を占め、競合であり、自転車部品では圧倒的なシェアを持つシマノの釣具部門の売り上げ410億円をしのぐ。しかし、シェアナンバー1でも安泰ではない。価格が1ケタ安い中国・台湾・韓国製品が釣具店の棚を席巻し始めているからだ。「釣女ブーム」に乗り、さらに仕掛け、新たな価値と顧客を創造することに活路を見出したいというところである。

 ましてや、釣り人口や市場は、減少、縮小の一途をたどっているのだ。2010年7月28日付日経産業新聞の記事によれば、「日本生産性本部の『レジャー白書』によると、釣り人口は2008年で1120万人。減少傾向にあり、ピーク時(1983年)からほぼ半減した」。先の産経新聞の記事によれば、「日本釣用品工業会によると、国内出荷ベースで1998年に2169億円だった市場が、2009年には1191億円とほぼ半減している」。

 シェア争いもさることながら、パイそのものの大きさを復活させることが、喫緊の課題なのである。

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