ボーイング787“ドリームライナー”は空の旅をどう変える?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/6 ページ)

» 2011年02月09日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

機体の50%以上に新素材を採用

 ライバルのエアバスがひと足先に市場に送り出した最新鋭機A380(次回のレポートで報告予定)がオール2階建て構造で500人前後を一度に運べる超大型機であるのに対し、ボーイング787は200〜300人乗りの中型機だ。外観だけでは、それほどの目新しさは感じられない。しかしこの機体には、さまざまな先端テクノロジーが凝縮されている。なかでも注目を集めているのが、ボディや主翼に採用された新素材。従来の旅客機に使用されてきたアルミ合金に代わり、787は全重量の50%以上がカーボンファイバー(炭素繊維)をベースにした複合材でつくられている。

飛行機と空と旅 787のボディや主翼には軽量かつ高強度のカーボンファイバー複合材が採用された(画像をクリックすると拡大します)

 カーボンファイバーは“軽くて強い”のが特徴で、ゴルフクラブのシャフトや釣りざおなどに利用されてきた。セーターや毛布などに使われるアクリル繊維を約1000度という特殊な条件で焼いた糸がカーボンファイバーだ。787に使用された複合材は、この直径5ミクロンのカーボンファイバーの糸をたばね、樹脂とともに重ねたものを焼き固めてつくる。軽量にもかかわらず、強度は鉄の約9倍。この新素材をボディや主翼に採用することで機体の大幅な軽量化が可能になり、787は従来機に比べて20%もの燃費効率向上を実現した。

「2001年に突然世界を襲った“9.11”同時テロ以降、私たちは旅客離れと原油高によってきわめて厳しい状況に追い込まれました」と、ANAに次いで早々に787導入を決めたアメリカ系エアラインの幹部は話す。「どの会社にとっても、燃費に優れ、長い距離を効率よく飛ばせる中型機787はまさに救世主のような存在だったと思います」

飛行機と空と旅 進化した787のグラスコクピット。ヘッドアップディスプレイ(HUD)も標準装備されている(画像をクリックすると拡大します)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.