平成の二・二六事件!? sengoku38氏が語る「尖閣ビデオ」事件の真相(3/4 ページ)

» 2011年02月15日 10時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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石原都知事も出席

 一色氏が事件後に初めて行った記者会見とあって、会場となった日本外国特派員協会には海外メディアだけでなく日本のメディアも多く詰めかけた。また、メディア以外にも、東京都知事の石原慎太郎氏も出席、一色氏にさまざまな質問を投げかけた。

――なぜ「sengoku38」というハンドルネームで動画を投稿したのですか? また、日本のメディアについて、どのような印象を持っていますか?

一色 sengoku38に関しては、一貫して秘密にしています。ちなみに、捜査当局や家族、弁護士にも言っていません。今後、発表する予定もありません。まあ、1つくらい秘密が残った方が事件が忘れられない感じになる、という気持ちがあります。「あんまり気にしないでください」と言えば、逆に気になるでしょうけど、それが狙いなので。

 もう1つ、メディアに対する不満ですが、私もこういう事件が起きるまでは「メディアというのは常に正しい報道をしている」と思っていたのですが、いろいろ推測や憶測でいろんなことを書かれたり、発言されたりしました。最初のころはいろいろと反論を考えていたのですが、そのうち面倒くさくなりました。具体的に何があったかということは、『何かのために sengoku38の告白』を読んでいただいたら分かるようになっています。

――ハンドルネームのsengoku38は「悪いやつは“仙石さんや”」と京都弁でジョークを言っているのではないですか?

一色 ご想像にお任せします。

――産経新聞の引用ですが(参照リンク)、一色さんの行為に対して、自民党の谷垣禎一総裁が「映像流出を擁護する人もいるが、国家の規律を守れないのは間違っている」とコメントしています。「二・二六事件でも『将校の若い純粋な気持ちを大事にしないと』という声があり、最後はコントロールできなくなった」と、1936年のクーデターと対比するようなコメントをしていますが、これについてどうお考えですか? また、一般論として、日本の公務員や外務省、自衛隊も含めてですが、もし政府が反日的、あるいは売国的な政策をやっていると判断した場合は、その命令に反しても行動を起こすべきとお考えですか?

※二・二六事件……軍部の方針に不満を持つ陸軍の皇道派に属する青年将校たちが、1936年2月26日に起こしたクーデターのこと。岡田啓介首相らを襲った。

一色 まず1つ目の質問ですが、機密というのはみなさまがあれ(流出映像)を見て、機密と感じられるかどうか、逆に私のほうから質問したいくらいです(会場笑)。本当に機密であるのなら、日本の公共放送各社がみんな私の共犯になってしまいます。

 クーデターとおっしゃいましたが、政府は転覆されなければいけないような何か悪いことをしているのでしょうか。二・二六事件の青年将校と比べられるのはある意味、光栄ですが、私はご存じの通り、一滴の血も流していません。これをもってクーデター(=反政府行為)と言うのであれば、ちょっと大げさな気がします。

 2つ目のご質問ですが、公務員がいかにあるべきか。これはいろいろ議論のあるところだと思います。よく言われるのは「第二次世界大戦当時、ナチスドイツの命令を聞かなければならなかった兵士たちはどういう気持ちだったのか」、そういうところまで考える必要があると思います。

 私が考えていることを人に押し付けることはしたくないので、私の個人的な考えだけを申します。私自身はいろいろ考えて、(映像を機密にすることは)政府命令ではありますが、本当にこれが国のため、国民のため(になるのか)、どちらがウエイトが重いかという観点で判断して、今回の行動に至りました。

――このビデオを流して、ご本人は当然ですが、家族の生活や考え方も変わったと思うのですが、そのあたりについてどのように考えられているか教えてください。

一色 まず、私の家内のことを話します。当初は非常に驚いていました。しかし、私を責めることなく、「私を信じてついてこい」と(言うと)、半ばあきらめたような感じでした。結婚してもう10年近くになるのですが、「改めてそういう(つながりを)見直せる機会があって良かった」と言ったらおかしいですが、そういうことがありました。

 子どもに関しては意外と聞き分けが良く、(引越しで)友達と別れていったのですが、1つ、引越しすることによって『ポケットモンスター』というアニメを見られなくなって、3日3晩泣かれたことだけがちょっと、父親としてふがいなさを感じています。あとは家族4人でおおむね楽しく暮らしています。

――一色さんがYouTubeに投稿された動画は編集されたものですが、編集される前の動画はどんな内容だったのでしょうか?

一色 編集されていたというのは、ある目的で編集されていたんだとは思います。編集前のものがあれば恐らく、私はそれを使用したと思いますが、残念ながら私の手元にはありませんでした。

 (投稿した動画では削除されていた)残りのビデオの内容についてですが、はっきり言って私は知りません。知っていてもこの場でしゃべるとまた身に危険が及ぶので、知らないということにしておきます。私が聞いているうわさでは、(中国漁船の船長が)「激しく抵抗したシーンが映っている」という説、「おとなしく捕まった」という説、その2つの説を聞いていますが、真相は定かではありません。できることなら、みなさまの力でそれを明らかにしてほしいと思います。

――(石原慎太郎都知事)2つ質問させていただきます。あなたの愛国的な行動に国民を代表して、心からの敬意と感謝を申し上げます。売国奴の集まりのような内閣が愛国者を告訴したり、起訴したり、告発したりすることができるわけがない。私は国民の声なき声が、政府を暗に動かしたと思うのですが、あなたが退職するという残念な結果になったことは、きわめて遺憾です。1つ目の質問はあなたが「自分がもし起訴されたならば、見てもらいたいビデオがある」と、あるメディアに言われたと聞きますが、それはどういう内容のビデオなのでしょうか?

一色 まず、都知事にいろいろおっしゃっていただいて、返す言葉がなく恐縮します。一応、退職というのは私なりに組織のルールを破ったけじめなので、みなさんが考えておられるほど、後悔も何もしていません。

 ご質問ですが、起訴ではなくて、「逮捕されればビデオが出る」という話でした。その(ビデオの)内容は1月21日に大阪のよみうりテレビで放映されています。それは私が出頭する前の11月8日に、「もし逮捕されて、私の真の声が届かなければ(公開してほしい)」ということでインタビューを受けていたものです。

――(石原慎太郎都知事)尖閣諸島の魚釣島に、私が実は最初に灯台を作ったんです。ただ、当時の外務省は時期尚早ということで、チャート(海図)に載せませんでした。それだと危険だということで、息子(石原伸晃氏)が国交大臣になった時に言って、灯台がチャートに載りました。第2の質問はですね、国会議員が国政調査権を使って尖閣諸島に行こうとした時、海上保安庁はどこまで協力してもらえますか? 有力な元職員として、海上保安庁の心構えを確かめさせてください。

一色 まず安全面で1つ、付け加えて言っておきたいことがあります。これは領土や領海の問題とは別に、現実に数年前、あそこで数万トンの貨物船が座礁しています(参照リンク)。その時はある意味、灯台をもっとたくさん作るチャンスだったのですが、残念ながらあまり報道されていませんでした。

 都知事のご質問ですが、海上保安庁にもいろんな考えがありまして、霞が関、海上保安本部、実際に船に乗る者とでは必ずしも一致していないと思います。これは恐らくではありますが、船に乗っている者は間違いなく「ぜひ協力する」という意見で一致していると思います。

 もし、海上保安庁が「協力しない」と言うのであれば、防衛省というのもあります。ほかにも水産庁、何よりも都知事であれば、東京都の船がたくさんあると思います(会場笑)。いずれにせよ、行く方法はたくさんあると思います。あとは「行こう」という気持ちだけです。

一色氏に質問する石原慎太郎都知事

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