平成の二・二六事件!? sengoku38氏が語る「尖閣ビデオ」事件の真相(4/4 ページ)

» 2011年02月15日 10時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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なぜYouTubeに投稿したのか

――講演の中で、日本と領土問題を抱える国を“ある国”と言って、実名を出さなかった理由は? また、中国が日本を抜いて、GDP2位になったが、それについてどう思うか? 日本と中国がうまくやっていくにはどうすればいいか?

一色 “ある国”とあえて言った理由は、みなさまの想像力で考えていただければと思います。

 GDPに関しては、私個人としてはあまり関心はありません。物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさというのがあると思うので、2位だとか3位だとかそんなことに感想はありません。

 また、中国の方にお話しできるのであれば、ぜひ中国政府の方から日本政府に圧力をかけて、「あのビデオを公開しなさい」と言っていただきたいと思います。中国政府も「逮捕時に船長が殴られた」とかおっしゃっているようなので、ぜひ真実が明らかになればいいと思います。

――尖閣のビデオを公開したことによって、あなたの世界平和についての考え方に変化はありましたか?

一色 特に変化はありません。私もペルシャ湾に行った経験から実際の戦争も見ているので、ああいう事件が起こったから考えが変わるということはありません。

――なぜYouTubeで映像を公開したのですか?

一色 YouTubeというのは、自分1人で最初から最後までできるということが1つのポイントです。メディアに持ち込んでしまうと、ある程度、他人に下駄を預ける形になります。一度それも試しましたが、「やはりダメだ」という結論に至りました。

 また、恐らくテレビ局ではあの(全映像を)44分間流すことは難しかったと思います。あのような形でただ漠然とビデオを流すと、そのことによって「これが本物かどうか?」と、客観的な目でいろんなことを考えられると思います。テレビ局だと、どうしても解説者がいろいろ解説しますので。見る人、見る人で感想が違う、考えが違う、それこそがいいのだと思います。

 あのビデオを見ても、「日本の巡視船がぶつかってきた」と言う意見もありますし、私はその意見に同意はしませんが、ある意味尊重します。いろいろ理由はまだありますけど、そういうわけで結果的にはまあ良かったと思っています。

――一色さんの存在が政治的に悪用される危険性についてどのようにお考えですか。また、一色さんが政治家になることはありますか?

一色 悪用されるというのは、おそらく2月9日の出来事(国会議員の超党派の会合で一色氏が話をした、参照リンク)をおっしゃっていると思うので、事実関係を説明させていただきます。

 いろんな新聞などを見ていると、ちょっと内容が違います。「ある議員が私に対する署名の名簿を集めていただいて、それを受け取りに行った」という話が事実です。(名簿を)受け取った場所も国会と書いていますが、正しくは議員会館です。

 当然、私がそこに行くと、「どんなやつだろう」という感じで人が集まってきました。やっぱり集まれば、話を聞きたくなるというのが人情だろうと思います。そこで無視して帰るというのもおかしいことなので、ただ単にそういう会話を繰り返しただけで、報道されているように私が国会議員の方に講演したということはありません。

 そういう報道のされ方を見ていると、「これはよっぽど自分がしっかりしなければ」という気にはなります。高名な方々とお会いして、先ほどの都知事のように褒め上げていただくので、どうかとすれば有頂天になりそうな感じになりますが、事件前の初心を忘れないように、自分の足もとをしっかりと見て、これから生きたいと思います。

 (政治家になるかと問われて)そういう話は今のところありません。考えることもありません※。

※初出時、「そういう話は今のところあります。考えることもあります」としていましたが、実際は逆でした。お詫びして訂正いたします(2月15日23時40分)。

――YouTubeに動画をアップしたからといって、必ずしも拡散するわけではないと思います。尖閣の動画は2010年11月4日の21時ごろアップされ、Twitterで最初に言及されたのが24時くらい、3時間くらいは見る人がいなかった状態が続いていたと思います。動画の拡散についてどのように考えていらっしゃったのでしょうか? また、拡散しなかった場合、別の方法は考えていましたか?

一色 その(拡散の)スピードは「予想していたより速かった」というのが正直な感想です。でも、本物ですから、「1〜2週間すれば、必ず広がる」とは思っていました。万が一失敗した場合については、次の策は考えていました。

 (次の策について問われて)それは真似をする人が出てきたら困るので言いません。

――ウィキリークスについて、どうお考えですか? また、公開していい機密情報と公開してはいけない機密情報の境目はどこにあると思われていますか?

一色 ウィキリークスと比べていただくのはありがたいですが、ちょっと私とは趣旨というか、主義が違うと思います。私も表面上しか知らないのですが、ウィキリークスは「すべての秘密を明らかにせよ」という主張だと受け止めています。私は政府の側で働いていましたから、隠さなければならない機密があるということは理解しています。

 その境目については非常に難しいと思います。ただ、今回の件は(公開していいだろうという)ボーダーラインをはるかに超えていたと、私が勝手に判断しました。

ウィキリークス公式Webサイト

――尖閣海域以外にも領土問題は発生していますが、そういった海域の警備につかれた経験があれば教えてください。また、日本の国境警備や領土問題のあり方についてどうお考えですか?

一色 そういう警備の経験はあります。

 それ(国境警備や領土問題のあり方)については、先ほども申しましたが、海上保安庁の中でもいろいろな意見はあり、私は一貫して現場の人間なので、現場の意見しか言えません。(国境警備は)国を守るというごく当たり前のことなのですが、現実は上の方の命令が右往左往することがやっぱり多々ありました。ただ、現場としてはそれを忠実に守って、余計なことを考えずにやってきました。むしろ今、普通の一般の国民に戻った方がいろいろ考えられると思っています。

英雄やヒーローと言われるのは間違っている

 最後に「英雄である。命をかけて国のために(映像を公開)された」と賞賛した質問者の言葉に、「英雄やヒーローと言われるのはちょっと間違っている。『命をかけて』と(言われたが)、私も命は惜しいです」と答えた一色氏。

 「これは先ほどの二・二六事件のクーデターと(同じと)いう意見の対極の意見だと思います。むしろ、当たり前のことと受け止められるように、日本がなっていけばいいと思います。恐らく昔は日本人というのはそういう考え方をしていたはずなのですが、これが最近失われているということをちょっと心配しています」と回答して会見を締めくくった。

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