“ポスト菅”はこの男でいいのか? 10%しか伝えない政治部のひずみ相場英雄の時事日想(1/2 ページ)

» 2011年02月24日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 菅首相の指導力急低下、あるいは与党の大混乱が続く永田町。こうした中、主要メディアから公然と「ポスト菅」の話題が伝えられている。同時に、各種世論調査を通じ、早くも次期首相候補の名前が挙がっている。だが、各種の調査結果、そしてそれを伝える政治報道のあり方に筆者は強烈な違和感を抱いている。今回の時事日想では、政治報道のひずみに触れてみたい。

あえてネタばらし

次期首相にふさわしいと思う人は? という質問に「前原誠司」氏がトップ

 2月18日、時事通信社が世論調査の結果を発表した(参照リンク)。調査の中身は「次期首相にふさわしいと思う人」。この中で、前原誠司外相が岡田克也民主党幹事長らをおさえ、トップとなった。永田町の混迷度が増す中で、若く、クリーンなイメージが強い前原氏の人気が上昇したことが同調査の結果に反映されたと筆者はみる。

 精気を感じられない菅首相より、前原外相のはっきりした物言いはテレビ映えする。発言についても歯切れが良い。「政局」が好きな主要紙の政治面が同氏を取り上げる回数を増やしていることもあり、“ふさわしい人”での前原人気が上昇したのではないだろうか。

 昨年、筆者は当欄で若手記者たちが永田町に渦巻くウソに振り回され、疲弊していると触れた(関連記事)。名刺に「作家/経済ジャーナリスト」の文字を刷り込んでいる身の上だが、今回はあえてジャーナリストの禁を破ってネタばらしを行う。昨年の記事で触れたウソ、若手記者たちを裏取りに走らせた人こそ、前原氏その人なのだ。

 同氏がその場しのぎで繰り出した数々の都合の良い話に振り回されたのは、新聞や通信社、そしてテレビ局の記者たちだ。これは決して1人や2人ではない。日本航空の一連の騒動の過程では、当時国交相だった同氏は最重要のキーマン。この当事者が記者たちを振り回し、大ブーイングの対象となったわけだ。

 記者だけでなく、同社の取引銀行も同氏の言動に不信感を募らせていた。「軽々しい発言が漏れ聞こえるたび、交渉が何度も紛糾した」(メガバンク担当者)のは事実だ。

 同社の負の遺産処理を巡っては、財務省も当事者だった。当然、当時の藤井裕久財務相も記者に囲まれる日々が続いたが、「前原大臣のようなウソはなく、記者や交渉をミスリードすることはなかった」(民放記者)。

 筆者は直接、日本航空の再建問題を取材していない。また政治家への取材経験も極端に乏しい。だが、昨年の記事で触れた通り、政治家が発する軽々しいウソほどタチの悪いものはないと思っている。

 前原氏に対し、筆者は個人的なうらみを持っているわけではない。国会取材でも廊下ですれ違った程度で、特別の感情はない。しかし、同氏ほど記者の評判が芳しくない政治家は珍しい。“好感度”が上がっている今だからこそ、あえてこうした記事を書いたのだ。

 筆者が知り得た類いの情報は、先の世論調査にはほとんど反映されていない。現場の記者が鬱憤(うっぷん)を溜め込んでいても、主要マスコミの上層部でこれに蓋(ふた)をしてしまうからに他ならない。

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