さらに懐疑派が投げかけるのは「バイオエタノールは本当にエコ的なのか?」という根本的な疑問である。
まず、生産から消費までトータルなサイクルで環境中のCO2をまったく増加させないという建前のバイオエタノールだが、現在は生産と輸送に化石燃料が使われているため効果は30%程度しかない。(この点は上記のドイツ環境省E10解説資料にも説明がある)
またバイオエタノール生産のため食糧生産が圧迫され世界的な食糧価格高騰を招くとの懸念や、ブラジルにおけるサトウキビ畑拡張による熱帯雨林の破壊問題も取りざたされている。環境保全団体の主張によれば、サトウキビ畑となっているブラジルの土地の多くはサトウキビ栽培に不向きであるため、過剰な環境負荷をかけているという。
著者は今回、主にE10導入の問題点を取り上げたが、決してバイオエタノールの否定を意図しているわけではない。それどころかバイオエタノールのポテンシャルの高さを確信しているのだが、バイオマスの生産、バイオ燃料の製造、輸送、そして消費まで、解決しなければならない点が多々あることを痛感しているのだ。だからこそバイオエタノール推進派も懐疑派も、主張に沿った都合のいいデータばかりでなく偏りのないデータを公表し、客観的な議論をつくす必要がある。
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