混合ガソリン「E10」は本当にエコなのか松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年03月04日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 2010年12月からドイツでもいよいよバイオエタノールを10%混合したガソリン「E10」の販売が始まった。バイオマス由来のエタノールはカーボンニュートラルな燃料として気候変動防止効果が期待されるものだ。

 これまで義務化されていた「E5」(5%混合)に替わり、消費者は今後E10を購入することになるわけだが、「エタノール割合アップ=エコ」と単純には言えないようだ。実際、環境保全団体の多くはバイオエタノールに懐疑的な立場をとっている。

市街地にあるガソリンスタンド。ドイツではほとんどのガソリンスタンドがセルフ給油

古くて新しいエタノール混合ガソリン

 エタノール混合ガソリンの歴史は思いのほか古く、ガソリンエンジンの基礎「オットーサイクル(4ストロークの内燃機関)」の発明者ニコラウス・オットーは1860年代にジャガイモから製造した蒸留アルコールをエンジンに使用していた。第一次世界大戦当時、この蒸留アルコールは戦闘機の航空燃料としても使われたという。

 ただし現代のように高度な燃焼技術があったわけではなく、ましてや排気ガスの浄化もままならなかった時代の話だから、局所的な排気ガス問題を引き起こしていたはずだ。エタノール混合ガソリンはガソリンに比べて排気ガス中の窒素酸化物濃度が高く、バイオエタノール懐疑派はこれを反対理由の1つとしている。

エンジンは大丈夫?

 エタノール混合ガソリンを使用する際、さらに大きな問題となるのがエンジンの適合性だ。エタノールには金属腐食性があり、混合比5%程度なら問題ないが10%になると故障原因になる。現在のところE10に非適合なクルマの割合は10%とされ、ドイツ国内で約200万台ものクルマが該当する。非適合車種は簡単に検索できるようになっているので(参照リンク:PDF)、ドライバーはE10給油前に必ずチェックしなければならない。なお、非適合車のためガソリンスタンドでは「スーパーガソリン(オクタン価95ガソリンの品名)」の販売が数年間は続けられることになっている。

 実は2008年にもドイツ政府はE10導入を本格検討していたのだが、その時は「社会的影響が深刻すぎる」という理由で見送られている。わずか2年で非適合車が劇的に減ったとは考えられず、気候変動抑制の機運の高まりが今回のE10導入を強く後押ししたといえよう。

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