震災後でも、首都圏のマンションが売れている理由あなたはどうする? 住まいの選び方(2/4 ページ)

» 2011年04月01日 08時00分 公開
[権田和士(日本エル・シー・エー),Business Media 誠]

マンションの需給バランスが崩れることを見越した消費者

 大震災の発生を受け、消費者の住宅購入意欲は下がっていくだろう。また意欲が低下すれば、物件の値下げが起こるだろう――などと予想する人も多いのではないだろうか。しかし、今回の震災の影響はそんな単純なものではない。

 今回の大震災でマンションデベロッパーや住宅メーカーがもっとも打撃を受けているのが、家を建てるために必要な資材、つまり建材の不足だ。例えば建材の1つである合板(ごうはん)の国内最大手メーカーであるセイホクは、東北に拠点を構えているため主力工場が壊滅状態に陥った。国内の合板市場で約3割のシェアを占めるセイホクの石巻工場や主力工場が軒並み被災し操業を停止していることで、国内の合板は圧倒的に足りなくなっている。他にも、建材大手のYKK AP、TOTO、トステムの3社はそれぞれ東北地域の工場の操業を停止し、サッシや断熱窓なども不足している。

 建材が不足するとそもそも家やマンションが建てられなくなる。実際に住宅メーカーの工事はストップしていたり、不足している建材の代替品を使って工事を続けている。今後建材の不足が続けば、建材コストが上がっていくことは避けられない。建材不足・建材コストアップという供給側からの事情を考えると、今後はマンションの値上げが避けられない状況だ。

 消費者マインドという需要サイドから考えると値下げが必要だが、建材やガソリンなどのコストアップという供給サイドから考えると値下げは現実的ではない。

 このように需給バランスが崩れるため、5月以降のマンション販売の予測は難しい状況だ。実際、5月以降のマンション販売を見合わせることを表明するマンションデベロッパーも出てきている。

 冒頭の話に戻ると、なぜ震災直後に首都圏のマンションが飛ぶように売れたのか。それは、この需給バランスの崩壊を見越し、しばらくはマンションの値上がり要因しか見当たらないことを考えた“賢い消費者”が購入に踏み切ったためだ。

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