東電の振る舞い、いかがなものか藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2011年04月04日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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公益企業としてのあり方

 鼓副社長が立ったまま謝罪したから、本心から申し訳ないと思っていないなどというつもりはない。問題は「本心」ではなく「見え方」なのである。記者会見場での頭の下げ方は誰でも気にするが、話し方や表情にまで気を配っているように見えないのはなぜだろうか。例えば計画停電の発表の仕方でも、それで困る中小企業の工場などに対する配慮がほとんど感じられなかった。工場は「ご不便」という言葉ではすまない負担があるとニュースで報じられている。普通の民間企業なら、いきなり地域分けして「サービス」の供給停止を宣言することなどありえない。そんなことをすればたちまち企業の存亡に関わるからである。

 東京電力にはそうした緊張感が感じられない。勝俣会長は、東電国有化という議論が出ていることについて「私どもとしては民営でやりたい」と答えた。損害賠償額が巨額に上ることも、原子炉を廃炉にするためのコストがかかることも容易に想像がつく。おそらく賠償金は数兆円にのぼり、とても一企業が負担できる金額ではあるまい。勝俣会長は国がどのように救済してくれるか分からないと語ったが、国の救済とはすなわち税金である。税金で救済されることを前提とする民間企業というものがありうるのだろうか。そのあたりは公益企業としてのあり方が問われるところだろう。

 東電がこれからの数週間にどのような対応を取るかによって、利用者の目はより厳しいものになるかもしれない。その時には、巨額の賠償に対する国の支援や料金の値上げといったことについて、相当強い反発が生まれることも覚悟しなければなるまい。事故はある程度仕方がない。しかしその事故のダメージをコントロールすることがリスク管理だとすれば、少なくとも今の東電(原子力安全・保安院もだが)がうまくやっているとは誰も思わないに違いない。

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