ヨン様からおひとり参加限定の旅まで……高齢者向けビジネスあれこれちきりんの“社会派”で行こう!(3/3 ページ)

» 2011年04月04日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
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なぜ振り込め詐欺は減らないのか

 このようにさまざまな高齢者向け市場が立ち上がりつつある日本ですが、まだまだ「1日の大半をテレビを見ながら過ごす、数千万円の貯金を持った高齢者」はたくさんいます。

 ちきりんが日本でも可能性があると思うのは、米国のフロリダや南仏の小さな別荘村のような「高齢者コミュニティ」です。そういった場所では、温暖な場所に高齢者向けのビジネスやサービスが集まり、格安に生活を楽しむことができます。

 最近は日本から引退後にマレーシアなどに移住するのも注目されていますが、海外移住は敷居が高すぎるという人が多いでしょう。日本には、新幹線の駅が近くて便利で、温泉も出る地価の安いエリアもあります。クラブツーリズムがやっているように「おひとりさま」も気兼ねなく移り住めるようになれば、そういうところで暮らしたい人も多いのではないでしょうか。

 しかし、今の「引退者用リゾートマンション」はあまりに高価なものばかりですし、街作りというより「分譲マンションの販売」に過ぎません。そうではなく、今後の高齢化人口の急増を前に「街全体として高齢者の普通の生活をサポートする」=「多彩な高齢者ビジネスが集積する」都市計画が検討されるべきかと思います。

 高齢者も、そういうコミュニティで仲間ができて一緒に遊ぶようになれば、「将来が不安だからできるだけ使わずに貯め込む」のではなく、「ぜいたくはしないけど、毎日を楽しく過ごす(ために消費する)」人も増えてきます。都会で独りでこもっているから不安がつのり、「頼れるのはお金だけ」的な思考に陥ってしまうのです。

 ちきりんは、「振り込め詐欺」がいっこうに減らない背景には、日本の高齢者が極めて孤立した生活をしているという理由があると思っています。もしも彼らが1日10時間、1人でテレビを見ているのではなく、毎日仲間と食事をしたり話をしたりしていれば、「この前、息子が逮捕されたとかいう電話が警察からかかってきてびっくりしたんだけど……」という話も茶飲み話として仲間内で共有されるでしょう。

 振り込め詐欺集団は、「多額の貯金を持ち、お金の使い道のない高齢者」に明確にターゲットして悪事を働いています。こういったタイプの詐欺の隆盛は、高齢者の貯蓄を適切な消費に導く合法的なビジネスの不在・不足と表裏一体とも言える現象なのではないでしょうか。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN

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