では、フクシマのイメージを救うことは可能なのか? 筆者は今後の対応次第で大きく救われる道があると信じている。ただし、ここで求められるのは決して口先だけのイメージ戦略ではない。
日本政府は事故の深刻さをなるべく低く見積り、ことあるごとに「あくまでチェルノブイリより被害ランクは低い」と主張しているが、言葉による情報操作的な試みは対外的には効果がない。海外は日本政府の発表する「直ちに危険なレベルではありません」などのコメントにはあまり関心がなく、あくまで独自の基準でリスクを評価するからだ。
「安全です」を連呼することではなく、より信用性の高い客観的な情報を発信すべきだ。都合のいい情報を伝えるというのではなく、厳しい現実もすべて明らかにするという意味である。汚染が起きた事実はもう消せない。地表のどこからどこまでが汚染され、どこからがクリーンなのか。中途半端な基準ではなく厳しい基準に基づいて、安全の境界をはっきりさせることが人々の安心につながる。
今からでも遅くない。政府は市民の被ばくを防ぐことを最優先し、「非常事態の中で最善の対策がとられた」という評価を得ることに努めなければならない。避難区域見直しの遅さを見ている限り、市民の被ばく防止より政府の都合を優先しているとの懸念は消えない。
守らなければならないイメージは「フクシマ」だけではない。「Made in Japan」というブランドイメージを守る対策も急がなければならない。
ドイツをはじめ諸外国は、今後、日本からの輸入品に対する放射線検査を厳しく実施する。今のところドイツに一律の規制といったものはないが、航空会社のルフトハンザが日本発の機体の放射線をチェックしている映像を見たことがある。食料品はもちろん工業製品も同じで「今後、日本のカメラは輸入が途絶えるから、在庫のあるうちに買っておいた方がいい」「これから輸入される日本車は放射能に汚染されている」といった話が、まことしやかに語られている。
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