最初のギャラリーに足を踏み入れると、ちょっと驚くような光景が広がる。そこには、ソットサス氏が亡くなる直前までスケッチを描きためていた、20点の「カチナ」が並んでいる。これらはすべて世界初公開となるものだ。
カチナとは、ネイティブアメリカンが信仰する超自然的な存在のこと。平たくいえば「精霊」のような存在で、このカチナをかたどったものを「カチナドール」と呼ぶ。
カチナドールは先住民族のグループによってさまざまに表現されており、アートとしても高く評価され、ジョージ・ネルソンや猪熊弦一郎など多くのクリエイターを魅了してきた。
ソットサス氏は、「デザインというものは幸運をもたらすべきものだ」と信じていたという。おそらく彼は、カチナに神秘的な世界観と幸運を引き寄せるようなパワーを感じていたのではないか。
カチナの表情は、実にさまざま。目や髪の毛がついた顔のように見えるものもあれば、何もないのっぺらぼうなものもあって、1つひとつ見ていて飽きない。それらの表情は、対峙する人の気持ちに寄り添って、いろいろな想いを喚起させてくれる。
これらは、ソットサス氏と旧知の間柄であるギャラリー・ムルマンのプロデュースによって、フランス・マルセイユの手吹きガラス工房「シルヴァ」が手がけた。当初、素材をセラミックでつくろうとしたがうまくいかず、最終的にガラスとコーリアン(人工大理石の一種)を組み合わせてつくり上げたという。その透明感と鮮やかな色彩、つるんとした美しい質感は、不思議な存在感でわれわれを見つめ返す。
ちなみに、エルネスト・ムルマン氏の自宅とギャラリーはソットサス氏のデザインによるものだ。晩年のソットサス氏は、建築設計のプロジェクトに没頭していたという。カラフルでシンボリックなその邸宅は、ソットサス氏の明るく力強い人柄をあらわすようだ。
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