菅首相、お辞めなさい藤田正美の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年06月06日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 菅首相は腹の中でほくそ笑んだかもしれない――。

 菅内閣に対する不信任案。民主党の党内抗争もあって予断を許さないような状況になっていたが、6月2日午後に行われた衆議院本会議で否決された。民主党から賛成に回った議員が2人、欠席した議員が小沢一郎元代表や田中真紀子元外相など14人の「造反」が出ただけ。賛成票のほぼ2倍近い反対票で不信任案を一蹴した。

あいまいな辞任カード

 こうなったのは本会議前に開かれた民主党代議士会で首相が「辞意表明」をしたからだ。ただ辞任の時期ということになると、鳩山前首相が言うような「6月いっぱい、あるいは7月の頭」なのかどうかはハッキリしない。菅首相は2日夜の記者会見で原発が冷温停止になるまでが「私の責任」と述べている。

 すでに発表されている工程表によれば、冷温停止状態になるのは早くても今年の後半、遅ければ来年の春ぐらいだ。この記者会見のとき、不信任案が提案されてから笑った顔を見せなかった首相が「ニヤリ」と笑った。「してやったり」ということだろうか(してやられたかもしれない鳩山さんは、「人間嘘をついてはいけません」などとのんきなことを言っていられなくなるかもしれない)。

 「不信任案可決による辞任」という今そこにある危機を、菅首相は“あいまいな辞任カード”で乗り越えた。これで当初は消極的だった現在の通常国会会期を大幅延長して「通年国会」にしてしまえば、少なくともこの会期中に内閣不信任のリスクに再びさらされることはない(一事不再議の原則があるからだ)。

 しかし国民の側は、とても笑う気にはなれまい。首相が即時あるいは即時に近い形で退陣しないということになったら、東日本大震災の復旧・復興もさらに停滞するだろうし、何と言っても2011年度予算の半分を超える財源確保のための公債特例法案の成立が不透明になる。野党が過半数を占める参議院で、予算関連法案の通過が著しく難しくなる。

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