大企業病の原因は“ロジカル”なオヤジたちにあり(1/2 ページ)

» 2011年06月10日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 大企業病や官僚主義は、すっかりそれに侵されてしまっている大企業だけでなく、小さな組織でも蔓延(まんえん)している例が少なくないように感じます。昔は、組織が大きくなるにつれて、創意工夫・挑戦が減り、部門間の協調・協働がなくなり、安住・鈍感の人たちが増えてくるようになることが多く、これを大企業病と言ったと思いますが、「大きな組織でなくてもそのような状況の企業が増えているのではないか」というのが実感です。

 中小企業においても、上は「現場に危機感がない」と言い、中間は「セクショナリズムがはびこっている」と言い、下は「閉塞感が漂っている」と言っていて、階層によらず大企業病と同じような症状に悩んでいます。この病気は、組織の大きさとは関係ないのかもしれません。

 論理的に考え、論理的に仕事をしようとする人たちの存在が、その原因となっているのではないでしょうか。

 「直感とか信念とか想いとかを、そのまま実行に移すのはリスクがあって良くない。証拠や根拠を丁寧に集め、実行すべき結論に間違いがないかどうか検証することが重要だ」と考える人たちの存在です。生じている問題をありとあらゆる観点から分析し、その解決策を漏れなく導き、それぞれの効果をシミュレーションしてから実行を検討するという人たちの存在です。この一見もっともらしい仕事の仕方が、大企業病や組織の非活性の原因ではないかと思います。

 そもそも、実行策に間違いはないとするための証拠を漏れなく集めることなど、不可能です。“漏れなくダブリなく”というのは、ロジカルシンキングにおける概念であって、実際にそれを実現できることはありません。気になる点、検証しておくべき点を挙げ始めたらいくらでもあって、それを延々とつぶしていくのは一定の条件下で正しさを追求する学者・研究者の仕事の仕方です。

 ビジネスなど複雑系における判断・決断というのは、どこまで論理的に考えるか、どこで論理的追求をやめるかが求められるのであり、だから論理以外に判断・決断する観点や基準が必要とされることも多くあるわけです。

 論理の正しさを大切にする人は、情報量の多さ、選択肢の多さを重視します。それだけ、論理が分厚く構成できるからですが、時間も手間もかかるため組織にスピード感がなくなり、上から見れば、その実行までの速度に危機感の欠如を感じるようになります。さして重要とは思えない情報集めに使われる部下も面白くはありませんし、選択肢を増やすためにコンペに参加させられる請負企業もたまったものではありません。

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