「とにかく傘を持って行け!」に“?”となる部下の気持ち(1/2 ページ)

» 2011年07月29日 08時00分 公開
[川口雅裕,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

イニシアチブ・パートナーズ代表。京都大学教育学部卒業後、1988年にリクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報(メディア対応・IR)および経営企画を担当。2003年より株式会社マングローブ取締役・関西支社長。2010年1月にイニシアチブ・パートナーズを設立。ブログ「関西の人事コンサルタントのブログ


 「空・雨・傘」という有名なフレームワーク。「空には雲が出てきている。ということは、雨が降るかもしれない。だから、傘を持っていこう」を縮めて言ったもので、「空に雲が出てきた=客観的な事実」「雨が降るかもしれない=推測・根拠」「傘を持っていく=意思・とるべき行動」のことを表わしています。

 企業・組織が戦略や行動を決定しようとする場合に、空がどうなっていて(客観的な状況認識)、これからどんな天気になりそうで(これからどんな事態が推測され)、どういう傘を持っていくか(だからどうする)をロジカルに考えるためのフレームで、「大切なことを勘や前例や横並びで決めてはいませんか?」というメッセージと言えるでしょう。

 このフレームは、マネジャーとメンバーの関係においても、非常に使いやすい考え方です。まず両者は、“空がどのようになっているか”を共有しなければなりません。

 上司が見れば、経験や知識が豊富だから「雲が出てきた」ことが分かるけれども、部下の目には「空には雲がない」と映ることがあります。逆に、上司にとってその豊富な経験をもとにすれば「雲ではない」と感じられるが、部下にとっては「大きな、それも黒い雲」に見えるようなことは少なくありません。上司が部下に仕事や役割や目標を与える際、このように状況認識にギャップがあると、互いの期待に応えられるような働きぶりにはなりません。

 次に、“これから、どんな天気が予想されるか”を検討しなければなりません。状況認識を共有したところで、今後の見通しについて考えるわけです。快晴になるのか小雨か嵐か、それがどのくらい続くかについて共有します。

 ここでも、前例や見聞の豊富な上司とそうでない部下にはシナリオを描く力に差があるわけで、「これくらいの雨が降るに決まってるやろ」という決め付けは、部下の具体的行動への納得性を低くします。また、本当にそうなるかどうかを上司自身が慎重に考慮する必要があるのも当然です。そして最後に、その際に大切なことは何か、我々はどうあるべきか、どうすべきかを同様に丁寧に思考した上で、決定・共有することになります。

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