岐路に立つユーロ――存続派の声を紹介しよう藤田正美の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年08月08日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 政府、日銀による為替介入が行われた。1ドル=76円台に突入したことで、産業界の危機感が高まったためだ。しかしその効果は限定的という見方が強い。円がリスク回避通貨とみられているためだという。それだけではあるまい。いま先進国経済は、リーマンショックの泥沼から脱出しようとあがいている最中だ。その回復を主導するのは、基本的に輸出である。米国もEUも日本も輸出を回復させることによって景気を牽引しようというのが基本的な戦略だ。

 輸出競争力を維持するために為替の水準は低く抑えたいというのが欧米の本音。もっとも米国のように国債を大量に海外に売っている国では、長期的にドル安政策をとるのは難しいかもしれないが、当面ということで言えばドル安は歓迎である。もちろんユーロも同じだ。ギリシャなどの債務危機は、根本的には競争力の弱い国が、ドイツのような強い国が主導する統一通貨ユーロにつながれていることも一因となっている。そうであればユーロは弱いほうが都合がいい。欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が、日本政府の単独介入を批判したのもそういった文脈で聞くと、EUの利害が透けて見える。

 しかしユーロは存続するのか、それとも統一通貨からさらに統合を進めるのか、1つの岐路に立っている。先週、統一通貨ユーロは失敗だったとする議論を紹介したが(関連記事)、今週は、同じ英エコノミスト誌のWebサイトで行われた議論で「ユーロを維持すべき」とする議論を展開したベルギーのヒー・フェルホフスッタト氏の意見を紹介する(なお、氏の意見は、このディベートの締めくくりとして書かれたものである)。

ユーロは存続するのか(写真と本文は関係ありません)
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