世界同時株安の流れから大幅安だが、買い戻しもあって下げ渋り清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2011年08月09日 16時09分 公開
[清水洋介,Business Media 誠]
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明日の相場雑感

 米国市場は週末の米国債格下げのニュースを受けてダウ平均は史上6番目の下げ幅となったことから日本市場も売り先行となりました。前場が終わった段階では東証一部銘柄の中で上昇した銘柄が10銘柄にすぎずほぼ全面安となりました。さすがに後場に入ると値ごろ感からの買い戻しなどもみられましたが、懸念材料も多く戻りも鈍いものとなりました。売り急がなければならない理由が特にみられたということでもなく好決算を発表しながらも大きく売られている銘柄が多いことを考えると、持高調整の売りも多いのだと思います。

 日銀のETD(上場投資信託)買いなどもあって下げ渋る場面もありましたが、世界の株安の流れは止まりません。昨日も述べましたが、こうした売られ方というのは1年のうちにも何度かみられるような感じです。昨年の5月から6月にかけても大きな急落となるなど、ちょっとしたことをきっかけに一斉に世界中の株が売られてしまうということのようです。基本的に今回の暴落も米国債の格下げが一つの理由になっていますが、その前から米国でのQE3(量的緩和)を催促するかのように一斉に売られる場面もありました。中国の金融引き締めからの景気鈍化懸念、欧州の財政問題からの金融不安に米国での財政問題から今度は国債の格下げの問題となりました。サブプライムローン問題の時も政府系の住宅金融公社の格下げなどが調達資金の縮小や調達金利の上昇につながったのと今回も同じ轍を踏んでいるような気がします。格付け会社の問題も多分にあると思いますが、リスク許容度が低下することには変わりなく、その分リスク資産を減らさなければならない人が多いということなのだと思います。

 ただ、まだ投機の部分がはげるということであれば、良いのですが投機資金は金に向かい、円にも向かわなくなってしまったので、かなり投機的な部分もリスクの縮小で処分をせざるを得ない資金が多いのかもしれません。リスク許容度が米国債や政府系の金融公社等の格下げをきっかけに縮小するとリスクを減らすためにリスクの高いものが売られ、例えばイタリア国債等が売られるとさらに今度はまたイタリア国債を持っている人達のリスク許容度が減り、次にリスクが高い米国株や日本株が売られ、そしてさらにリスク許容度が減ると・・・、というようなスパイラル的な売り、まさしくリーマンショックといわれたところと同じような売られ方ではないかと思います。

 こうしたショック安が実体景気に影響を与える、つまり資金の回転が止まる、特に金融機関の資金の出し手としての機能が止まるようなことになると、2008年〜2009年のようなことになってしまうのだと思います。ただ、当時から業績はしっかりと回復、スマートフォン(多機能携帯電話))関連の収益上昇や新興国の生活水準向上に伴う需要増加による、企業業績の上昇を考えると、当時の株価水準までの下落という可能性は少ないと思います。ドルベースで指数を考えるとまだまだ円高となっていることで水準としては高いのでしょうが、当時に比べての円高抵抗力などを考えると、株安=リスク許容度の低下からの景気後退とならない限り、早晩戻ることになるのだと思います。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券、リテラ・クレア証券で相場情報などに携わってきた。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


※掲載されている内容は、コメント作成時における筆者の見解・予測であり、有価証券の価格の上昇または下落について断定的判断を提供するものではありません。
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