縮む器、ニッポンへの“とてつもない処方せん”郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年08月25日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

器は縮んでいる

 今年、創設20年を迎えたJリーグ、1991年の発足直後には大ブームとなった。以来、世代ごとに選手層が厚くなり、代表チームはワールドカップには4大会連続出場、日韓大会と南アフリカ大会で決勝トーナメントにも出場した一方、Jリーグの観客動員数は近年減少傾向にある。テレビの地上波中継も激減し、観客動員はコアなファンや地元の努力で支えられている。そして遂に、浦和レッズの決算が赤字になった(2010年度)。それは縮みの象徴である。

 理由は「客を呼べる有力選手の欧州への移籍」だろう。インテル長友佑都選手、ドルトムント香川真司選手、CSKAモスクワ本田圭佑選手らの活躍を見れば明らかで、Jリーグという器に穴が開き、次第に大きくなっている。

 野球はどうか。地震の影響があるにも関わらず、今年のセ・リーグの観客数は微減、パ・リーグは微増と健闘。1試合平均2万5000人の動員はやはり日本最大のスポーツ娯楽である。少なからずの選手の意識は「メジャーでやるのが夢」だが、ワールド・ベースボール・クラシック(野球の世界一決定戦)で日本が2連覇しているようにレベルも高い。“ガイジンの助っ人”も通用しないことがある。100年以上の歴史があるローカルスポーツ、国内でも十分食っていける。日本の野球場の器は“内向きにすり鉢状”である。

 ほかのスポーツではどうか。フィギュアスケートは世界トップ選手と広告会社の力で、日本中心のロクロを回すまれな例である。とはいえ世界的にはレアな競技だ。女子バレーボールにもかつてトップの時代があったが、今では世界各国にブロックされている。大相撲は土俵という器に亀裂が入り、力士も親方も足をすくわれた。

 多くの競技では、「こんなもんさ」「日本で十分食える」「本場には勝てない」とあきらめムードがまん延。その間に器はどんどん縮む。それでいいのだろうか? 主宰者もファンも選手も、これでいいのだろうか?

日本のオーガスタ、日本のバルセロナを作る

 「守りに入るとやられる」のはあらゆるスポーツの鉄則。もっと器の魅力を高めないと、もっと縮む。みんなが低成長意識にどっぷり漬かる今こそ、“とてつもない目標”を立て、反転させる提案が必要だと思う。

 まずゴルフでは「日本のオーガスタ」を作ろう。超難易度の国内ゴルフコース。選ばれたトッププロだけが攻略できる設計で、そのトーナメントで勝つことは米国本家に匹敵する権威となる。ゴルフ場という器からやり直す。

 サッカーなら「日本のバルセロナ」だ。世界から圧倒的なメンバーを集め、Jリーグで5年以上連続で優勝し、アジアチャンピオンズリーグでも常勝する日本のバルセロナ。アジアいや欧州選手も、そのチームに入るのが栄誉なチームである。チームという器からやり直す。円高は海外選手を安く獲得できるチャンスでもある。

 スタジアムの器は「日本のカンプ・ノウ」である。カンプ・ノウはバルセロナにある世界一のサッカースタジアム。9万人収容、誇りあるサポーターが集う聖地を、国内にも作りたい。

FCバルセロナ公式Webサイト

 日本をスポーツの一大メッカにする――これは立派な国家産業戦略だ。スペインやイタリアのように、成熟国の成長戦略には、スポーツやアートなどの娯楽がぴったりだ。日本の器を大きくすれば、石川遼選手も喜んで日本でプレーするだろう。

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