評価は後世に委ねたい――菅直人首相、辞意表明会見全文(1/5 ページ)

» 2011年08月27日 15時56分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 菅直人首相は8月26日午後、退陣条件としていた再生可能エネルギー固定価格買い取り法と特例公債法が成立したことを受け、民主党両院議員総会で退陣を表明した。

 2010年6月8日に首相に就任し、東日本大震災などを経て1年2カ月半と、現役国会議員では最も長く首相を務めている菅氏。その後、首相官邸で開いた会見の内容を首相官邸公式Webサイトの動画(参照リンク)をもとに詳しくお伝えする。

菅直人首相(出典:首相官邸公式Webサイト)

「与えられた厳しい環境の下でやるべきことはやった」

 国民のみなさんに私からご報告をすることがあります。本日公債特例法、そして再生可能エネルギー促進法が与野党のみなさんの努力によって成立をいたしました。これで第2次補正予算を加え、私が特に重要視していた3つの重要案件がすべて成立したことになります。これにより、以前から申し上げておりましたように、本日をもって民主党の代表を辞任し、そして新代表が選出をされた後に総理大臣の職を辞することといたします。

 まず、国民のみなさんに申し上げたいと思います。2010年6月8日に総理大臣の職に就いて以来、国民の多くのみなさまから多くの叱咤激励をいただきました。温かい激励、厳しい批判、そのすべてが私にとってはありがたくうれしいものでありました。国民のみなさまには心から感謝を申し上げます。また、ともに新しい政治への変革に挑戦してきたみなさんにも感謝をいたします。閣僚を始め、政務三役、政府職員、与党・野党の国会議員。そして全国の党員、サポーター。こうしたみなさんの支えがなければ、菅政権は一歩も進むことはできませんでした。

 政権スタートの直後、参議院選挙の敗北により、国会はねじれ状態となりました。党内でも2010年9月の代表選では全国の党員を始め多くの方々からご支持をいただき、再選させていただきましたけれども、それにも関わらず厳しい環境が続きました。

 そうした中で、とにかく国民のために必要な政策を進める。こういう信念を持って1年3カ月、菅内閣として全力を挙げて内外の諸課題に取り組んでまいりました。退陣に当たっての私の偽らざる率直な感想は「与えられた厳しい環境の下でやるべきことはやった」という思いです。大震災からの復旧・復興、原発事故の収束、社会保障と税の一体改革など、内閣の仕事は確実に前進しています。私の楽観的な性格かもしれませんが、厳しい条件の中で内閣としては一定の達成感を感じているところです。

 政治家の家に生まれたわけでもなく、市民運動からスタートした私が総理大臣という重責を担い、やるべきことはやったと思えるところまでくることができたのは国民のみなさん、そして特に利益誘導を求めず応援してくださった地元有権者のみなさんのおかげです。本当にありがたいと思っております。

 私は総理に就任した時、「最小不幸社会を目指す」と申し上げました。いかなる時代の国家であれ、政治が目指すべきものは国家国民の不幸を最小にとどめおけるかという点に尽きるからであります。

 そのため、経済の面では雇用の確保に力を注いで参りました。仕事を失うということは、経済的な困難だけではなくて、人として、人間としての居場所と出番を失わせることになります。不幸に陥る最大の要因の1つであります。私が取り組んだ新成長戦略も雇用をどれだけ生み出すかということを、そうした観点を重要視して作り上げたものです。

 また、さまざまな特命チームを設置して、これまで見落とされてきた課題。例えば硫黄島からの遺骨帰還や、難病・ウイルス対策、自殺・孤立防止などにも取り組んで参りました。

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