市販のサラダは何ベクレル? 秋葉原で放射能測定を体験した(2/4 ページ)

» 2011年10月20日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

市販のもやしとサラダに放射性物質は含まれているのか?

 いざ測定……の前に、まずは包丁でもやしを細かく刻む。SEG-001では500ミリリットルまで測定できるのだが、試料をたくさん詰めた方が、検査精度が高くなる。そのため、測定容器内に食品を入れる時、隙間が少なくできる大きさに加工することが大切なのだ。

実はこの作業が一番時間がかかった

 空の測定容器をビニール袋で包んで重量を計った後、刻んだもやしを入れて再度測定。容器いっぱいにもやしを詰め込んだのだが、「後者の重量−前者の重量」は414グラムだったので、若干刻みが甘かったかもしれない。

試料となる食品の重量を測定

 重量を測った後、フタをかぶせて、さらにビニール袋で包んで、測定容器をSEG-001本体に挿入する。測定結果が出るまでは、「試料に放射性物質が含まれている」前提で検査するので、これらの作業は基本的にビニール手袋をはめて行う。

基本的にビニール手袋をはめて作業するが、測定容器を包むビニール袋は汚染されないようにするため、試料に触れていない手で直接扱う
最後にふたを閉じて測定。測定する際に特に音などは出ないので、本当に測っているのかどうか若干不安になる

 ノートPCにインストールした「AkWin」という専用ソフトウェアに、重量データを入力し、それまでの測定結果を分析するプログラムを走らせると、その時点での放射性物質の検出下限値がPCモニタに表示される。

重量データを入力

 10分ほど後にプログラムを走らせてみたところ、もやしからは検出下限値を超える放射性物質は検出されなかった。次図が分析結果を示したPC画面のスクリーンショットである。

 もし、試料から検出下限値を超える放射性物質が確認された場合には、別に具体的な値を表示する仕組みとなっている※。

※ただし、ガンマ線は常に同じ量が放出されるわけではないので、その揺らぎを考慮して値の意味を考える必要がある。また、専用ソフトウエアの性能によっても精度が変わるので、同社では「プロトコルの向上に努めている」としている。
619秒測定した時の分析結果。下の数値が検出下限値。検出下限値を超える放射性物質は検出されなかったので、セシウム134は1キログラム当たり1.99E+01(=19.9)ベクレル以下、セシウム137は1キログラム当たり2.00E+01(=20.0)ベクレル以下であることが分かる
蛍光の分析結果。横軸は蛍光のエネルギーを示すeV、縦軸は計測した蛍光の個数。放射性物質が入っていると、特定のエネルギーの位置で山ができる

 測定時間を長くするほど検出下限値は低くなり、また測定前に環境中の放射線量(バックグラウンド計数値)も測っているのだが、その時間も長くするほど検出下限値が低くなる(今回、バックグラウンド計数値の測定時間は3600秒)。

 SEG-001でバックグラウンド測定時間を3600秒とった場合、試料計測時間が3600秒だと検出下限値は1キログラム当たり5.39ベクレル、300秒だと1キログラム当たり15.34ベクレル。乳幼児食品の暫定規制値は1キログラム当たり100ベクレル以上なので、試料が暫定規制値を上回っているかどうかは5分ほどの計測でもある程度は判断できることになる。

試料測定時間、バックグラウンド測定時間と検出下限値の関係(SEG-001の場合)

試料測定時間 バックグラウンド測定時間 検出下限値
ベクレル/キログラム
36000 36000 1.67
3600 3600 5.39
1800 3600 6.73
600 3600 10.77
300 3600 15.34
180 3600 20.36
60 3600 39.74
※バックグラウンド計数率=3.5cps(毎時0.10マイクロシーベルト環境下)、エリアバックグラウンド=0.35cps、線源効率=0.80%、試料の量=0.5リットル、試料密度=1.000

測定後も食品は食べられる

 もやしの次は、サラダを測定。今度は刻まずに、そのまま測定容器に放りこんだ。ガンマ線はビニールを透過しやすいため、ドレッシングも袋ごと機械に投入。測定容器に入れてビニール袋に包むだけで、試薬を加えるといったこともないので、サラダは測定後もそのまま食べられる。

サラダはドレッシングごと直接測定容器に放り込んだ

 こちらも15分ほど測定したところ、検出下限値を超える放射性物質は検出されなかった。

1000秒測定した時の分析結果が下の数値。セシウム134は1キログラム当たり4.12E+01(=41.2)ベクレル以下、セシウム137は1キログラム当たり4.26E+01(=42.6)ベクレル以下であることが分かる。もやしより時間をかけて測定しているのに検出下限値が高いのは、サラダの方が試料の重量が軽かったからである

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