なぜ情報開示が重要になったのかちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)

» 2011年10月31日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
前のページへ 1|2       

今までは情報開示が必要なかった!?

 このような事態が多々発生しているのは、政府与党も官僚組織も「情報開示なんてものがまったく不要であった長い過去の経験」が頭から離れていないからでしょう。

 実際に昔は、官僚が作った政策や法案は国民がよく知らない間に問題なく成立していました。それがここ10年くらいは、事前説明を怠ると大混乱するようになってきたのです。

 過去に情報開示が不要であった理由は、自民党政権が盤石であったということに加え、どんな政策変更が行われても「国民負担が大きくは増えなかった」ということがあります。

 例えば、国民皆保険制度が昭和30年代にできました、という話なら、事前説明などなくても誰も文句を言いません。なぜなら、それは国民に有利になる政策変更だからです。

 バブル時代には、地方に高速道路やら美術館などがじゃんじゃん建造されました。これだって、国債発行で作るわけですから、国民は短期的には懐の痛みを感じずに済みます。そういう状況であれば、為政者が国民に何も説明せず好きにやっても問題にならなかったわけです。

 そんな時代が長く続いてきたので、政治家も官僚も、身内以外にその背景や理由を説明する必要性をほとんど感じなかったのでしょう。

 しかし、今や新たな政策の大半は国民に負担を強いるものとなりつつあります。こんな経済停滞時代に国民の負担を増やす政策を通そうと思えば、当然、なぜそれが必要なのか、本当にそれが必要なのか、一番適切な方法なのか、などについてきちんと説明しないと話は通りません。情報開示と説明責任を果たすことが政策成否の鍵を握るようになってきたのです。

今後の情報開示のあり方は

 とはいっても、政治家、官僚側も有権者に全部を見せられるか?……というと、コトはそう簡単でもありません。彼らはこれまで、情報を囲い込み、自分たちに都合のいいようにその情報を解釈することで、その権限や権益を維持してきたからです。すべての情報を開示すれば、その情報をどう判断するかという権限は、自分たちではなく国民に移ってしまいます。

 このため彼らは、情報開示不足が原因で足下が揺らいでいるにも関わらず、自分たちの権限維持のためには、やはりすべては見せられない、という矛盾した状態に追い込まれています。

 このジレンマにどう立ち向かうか。「決して積極的には情報開示をしない」「聞かれたことだけに答え、聞かれていないことは重要なことでも一切説明しない」という今までのやり方が、本当にこれからも通用するのか、頭の良い霞ヶ関のみなさんの今後の行動に注目したいものです。

 そんじゃーね。

『自分のアタマで考えよう』(ダイヤモンド社刊)

ちきりんさんによる新刊『自分のアタマで考えよう』がこのほど発売されました。

「プロ野球の将来性」「結論が出ない会議の秘密」「少子化問題のゆくすえ」「婚活女子の判断基準」「消費者庁が生まれた真相」「就活で失敗しない方法」「自殺の最大の原因」など、社会問題や日常の疑問を考えながら、「ちきりん流・思考の11のルール」を分かりやすく解説します。


著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN

 →Chikirinの日記


関連キーワード

ちきりん


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.