会社の哲学に従えない人は辞めるべきか?吉田典史の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年11月04日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

まずは私の言うとおりにしてみなさい

 私は前述したような疑問、つまり、「経営者の考えや発言が『会社の哲学』として受け止められ、社員はいかなるときもそれに従うことが求められないだろうか」と尋ねた。

 奥山さんの回答は、次のようなものだ。

 「その経営者の考えや発言の内容にもよりけりだと思う。明らかに常識外ならば、問題はある。だが、これは押さえたほうがいい。その会社の売り上げが特に30億円に達していない時期ならば、経営者は創業期から猛烈に仕事をしてきたはず。少なくとも、ほかの社員の数倍は優秀だと思う。経営する上でのリスクも背負っている。それを踏まえると、きっとその経営者は『まずは私の言うとおりにしてみなさい』と言いたいのではないか」

 その「言うとおり」とは、仕事の進め方ややり方、さらに仕事をする際、何に重きを置くのか、といった価値観の指針になることなどである。

 そして、こう繰り返す。

 「社員が経営者の考えや発言の内容にあまりに抵抗を感じるならば、辞めた方がいい。売り上げが30億円に到達していない小さな会社ならば、なおさらその経営者の考えは強くなる。また、そのくらいに強くないといけない。そうでないと、組織は作れない」

 私は、こんなことを思い起こした。私が以前、奥山さんが話したようなことを記事にしたところ、それを読んだ読者が次のようなブーイングを自身のブログに書いていた。

 「経営者の考えに従えないならば、辞めるべきというのは傲慢。会社の哲学や価値観は、社員みんなで話し合って決めて、共有するべき。そうでないと、現場に浸透しない」

 私は、このとらえ方をする人の言わんとしていることは分かるつもりだ。確かに、一部のコンサルタントらも講演や著書などで「会社の哲学はみんなで話し合い、ディスカッションする行為の中にこそある。決して経営者が押し付けるものではない」と語っている。ただ、どうも理想論に聞こえなくもない。いや、空想にも思える。

 奥山さんは、このとらえ方に疑問を呈する。

 「売り上げが数百億円に達した会社ならば、みんなで哲学や価値観について話し合い、共有することができるのかもしれない。しかし、私がコンサルティングなどを通して見てきた、売り上げ30億円以下の会社でそれは理想でしかない。この規模では、まだ組織ができていない」

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