先週、筆者が気になった記事があった。それは「オリンパス株で約20億円の利益……ゴールドマンのすごすぎる手口」。マイケル・ウッドフォード氏が社長を解任される前から空売りをかけ、11月初旬に買い戻して20億円ほどの利益を得たという内容である。
金融業界でその名をとどろかせるゴールドマンサックス。後学のためにその手口を詳しく分析しようと、東証が公開している空売り残高状況(参照リンク)をチェックしたところ興味深いことが分かった。ゴールドマンサックスは、かなり早い段階からオリンパス株を空売りしているのである。
データによると、ゴールドマンサックス(正確にはGOLDMAN SACHS INTERNATIONAL)が最初に空売りを仕掛けたのは7月13日のこと。空売り株数は85万7900株と、約22億円規模となる。7月13日のオリンパス株の出来高は320万8300株なので、出来高の4分の1をゴールドマンサックスが占めていたことになる。なかなか思い切った勝負である※。
しかし、オリンパスの疑惑を最初に報じた「オリンパス 『無謀M&A』巨額損失の怪」を掲載したFACTA8月号の発行日は7月20日(オンライン版は7月18日)である。その前に発行人の阿部重夫氏がブログで「FACTAleaks――オリンパスへの公開質問状と宣戦布告」と予告しているのだが、それは7月15日のこと。ゴールドマンサックスが空売りを仕掛けた後である。
さらに注目なのは、ゴールドマンサックスが7月末にすぐ空売りを買い戻していること。あたかも記事が出ることを事前に察知していて、記事の反響がないと見るや撤退を決めたかのようである。著者の山口義正氏がニコニコ生放送で語ったところによると、いろんな編集部に持ち込んだ企画で、疑惑自体は少なからずの人が気付いていたということなのだが(阿部氏が6月24日に質問状を送っているのでオリンパス側も把握している)……FACTAさん、もしかして情報漏れていませんか。あるいは……偶然にしてはタイミングが良すぎると思うのは、筆者の考えすぎだろうか。
ちなみに、ゴールドマンサックスが空売りを仕掛けた時のオリンパスの株価は2600円台、7月末に買い戻した時の株価は2700円台。8月からの欧州危機が影響した市場環境の悪化で、オリンパス株も2100〜2200円台に下げているので、ゴールドマンサックスとしては最悪のタイミングの取引となっている。担当者が涙目になったことは想像に難くない。
ゴールドマンサックス(空売り株数) | 終値(円) | 出来事 | |
---|---|---|---|
7月12日 | − | 2660 | − |
7月13日 | 857900 | 2623 | − |
7月14日 | 845700 | 2629 | − |
7月15日 | 817000 | 2633 | FACTAブログで阿部重夫氏が宣戦布告 |
7月18日 | 休日 | 休日 | FACTA8月号 オンライン掲載 |
7月19日 | 1085100 | 2635 | − |
7月20日 | 1207500 | 2685 | FACTA8月号 発行日 |
7月21日 | 1222400 | 2692 | − |
7月22日 | 1222200 | 2760 | − |
7月25日 | 1215100 | 2711 | − |
7月26日 | 1211000 | 2744 | − |
7月27日 | 1218600 | 2721 | − |
7月28日 | 834000 | 2718 | − |
7月29日 | 425500 | 2745 | − |
8月1日 | − | 2753 | − |
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