津波で町は流されたけど……石巻市雄勝地区の成人式東日本大震災ルポ・被災地を歩く(2/3 ページ)

» 2012年01月16日 08時00分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]

新成人それぞれの声

 ほかの新成人たちにも話を聞いてみた。

高橋佳乃子さん(19) 仙台市内に在住。3月11日は誕生日。友達が誕生日を祝ってくれるために、実家の雄勝地区から仙台市に向かったが、地震のためにパーティーは中止。「誕生日がこの日だったから助かったようなものです」。雄勝地区の友人とも連絡が取れないでいたため、震災後、初めて会った友達も多く「懐かしかった」。

末永香織さん(20) 石巻市内で仮設住宅に暮らす主婦。6カ月の子どもがいる。名前は龍斗、強くなってほしいとの意味。4月末に震災後の雄勝中学校を見た時には「言葉にならなかった」。

末永香織さん(左)と高橋佳乃子さん(右)。2人が会うのは中学校卒業以来

阿部智美さん(20) 石巻市の日和山近くのアパートで被災。雄勝地区にある実家は全壊。「雄勝の町がなくなってしまったのは信じられない。でも、今日は(式の途中で流れた過去の写真を見て)中学校での文化祭や修学旅行を思い出しました。これから前みたいに戻れるように頑張りたい」。

高橋祐介さん(20) 雄勝地区の自宅は大規模半壊。ただ、自身の部屋は2階にあり、助かった。現在はなんとか修復し、自宅に住んでいる。震災当時は実習中で海の上で船に乗っていた。「津波は分からなかった。大したことはないと思っていただけに、実際に町を見ると悲しかった。まだまだ復興はしていない。できれば船の仕事をして、雄勝に残りたい」。

永沼亮太さん(20) 雄勝地区の実家は流出したが、家族は無事。「地元で式ができないと思っていたのでびっくり」。今は仕事をしながら消防士になる勉強をしている。「先輩から話を聞いて消防士になるため、震災前から勉強している。震災時の活躍を見て、余計になりたいと思った。石巻からは出ないつもり」。

末永翔さん(20) 雄勝地区立浜の実家は流出。「なくなると、自分の故郷だという実感が改めてわく」。流された小中学校の時代のアルバムを式で見て、みんなで外で遊んだことを思い出した。「同級生に犠牲者はいないと聞いていたが、久しぶりに会うとやっぱりうれしい」。

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