「従軍慰安婦」抗議からみえる、日本で起きるデモの「未来」(後編)ニッポンの紛争地帯をゆく(2/5 ページ)

» 2012年01月19日 08時02分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]

警察の封鎖をかいくぐって外務省前に“上陸”

 外務省正門前ですでに「従軍慰安婦」の老婆が記者会見を開いていた。朝日新聞に共同通信、NHKに韓国メディア……30人以上の記者に取り囲まれている。思っていた以上にご高齢で、こんな場所にして大丈夫かと心配してしまうほどヨボヨボだった。

 「7年もの慰安所生活を中国で強制された後、日本軍兵士にダマされて日本にわたって来ました。日本でも半世紀、在日朝鮮人としてあらゆる差別を一身にうけながら中国の慰安所時代に関しては沈黙し語ることはできませんでした。語り始めたソンさんは10年間、日本政府を相手に裁判を闘いました。しかし、司法の厚い壁は崩すことはできませんでした」

 支援者の女性が時おり涙で言葉をつまりながら訴えているのを聞いていると、外務省前の地下鉄のあたりが大騒ぎになっていることに気付いた。

 見れば、「在特会」が地下鉄霞ヶ関駅の地下通路を経由して、車道の向こう側からわたって来たのである。地下鉄出口の階段から続々とあがってくる日章旗を掲げた一団。それを阻もうとする警官隊。目と鼻の先では、ロマンスグレーのおばさまや、若い女性たちが手をつないで「人間の鎖」をやっており、不安そうな表情を浮かべている。

 これは……えらいことになったぞ!

地下鉄霞ヶ関駅の出口から外務省前に“上陸”を果たした「在特会」。警官隊が必死に壁をつくる

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