あっぷあっぷのコンテンツ産業に、打つ手はあるの?中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(2/3 ページ)

» 2012年01月30日 12時51分 公開
[中村伊知哉,@IT]

 しかし。実はコンテンツ産業はあっぷあっぷしている。市場規模は、拡大はおろか逆に減少に転じつつあるのだ。出版も音楽も映画も放送も皆苦しんでいる。広告も縮小傾向だ。

 クールジャパン?

 ポップカルチャー御三家も苦戦。1997年に5700億円の売り上げがあったマンガは2009年には4200億円まで縮小。アニメ制作時間数は2006年をピークに減少、DVDの売上も減少している。ゲームも国内市場は2008年から減少に転じている。

 クールジャパン?

 海外で御三家が奮闘しているとはいえ、コンテンツ全体の国際競争力は高くない。収入の海外・国内比は日本は4.3%で、米国の17%に遠く及ばない。政府はアジア市場の収入を2020年までに1兆円拡大する意向だが、道筋が見えているわけではない。

 クールジャパン?

 ゲームにしても、ビジネスの主戦場はかつて日本勢が世界を制したテレビゲームからパソコン上のネットゲームに移行しており、韓国が世界市場の10%を獲得する一方、日本は完全に出遅れた。GREEやモバゲーが巻き返してくれるか。10年前にアジアでJ-POPというジャンルを確立したポップ音楽も、今は韓国のK-POPに地位を奪われている。

 クールジャパン?

 コンテンツ産業が苦戦しているのは、リーマンショック以降の景気のせいばかりではない。ネットの普及で変化した消費者の需要に対応できていない面がある。かつての、少品種の商品を大量に売るヒット商法が、無数のコンテンツを無料で消費するユーザーの嗜好に合わなくなってきているのだ。

 若いネットユーザーは、明らかにコンテンツの消費性向がその上までの世代とは異なっている。コンテンツにお金を払って向き合うより、無料コンテンツをみんなで共有して遊ぶコミュニケーションに価値を見いだしている。コンテンツ側も根本的な戦略の転換が必要だ。

 とはいえコンテンツ産業はGDPの3%。頑張ったところで国の支柱となる規模ではない。ただ、かつて取り締まりの対象でしかなかったマンガやゲームを政府が今や国の宝として扱っているのは、ハーバード大のジョセフ・ナイ教授が「日本はポップカルチャーの強みを発揮し、ソフトパワーを発信できる」と評した通り、その外部経済効果が大きいからだ。産業規模は小さくても、コンテンツがもたらすイメージやブランド力が他の産業を押し上げる効果を持つ。

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