金融市場は好調だが……世界経済の懸念点は?藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2012年02月13日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 政治が増税論議一色になっている一方で、復興予算によって経済には明るさが見えている。昨年末、大納会としては29年ぶりの安値になった東証の日経平均株価。そこから比べると500円ほども上げている。率にすれば5%ほどである。

日経平均株価の推移(出典:Yahoo!ファイナンス)

 日本だけではない。MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の世界の株式指数によると、年初来で7%、2011年10月初めから比べると20%も上昇している。2011年10月といえば欧州の債務危機がどう転ぶか分からなかったころ。株などのリスク資産から投資資金が逃げ出していた。世界の投資家が再びリスク資産に戻っているということになる。

 最も懸念されていたギリシャの債務危機は、どうやら「突然死」は避けられたように見える。この危機を封じ込めることができれば、ポルトガルも同じような条件で支援することが可能だろう。実際、フランスの財務相がポルトガルの財務相にそう話したところが偶然に録画され、放映された。まだ一件落着とまではいえないが、とりあえずスペインやイタリアの国債利回りが急落するようなことがなければ、一応は収まりそうだ。

 もっともこれでユーロの根本問題が解決されたわけではない。各国が財政規律を守るという合意が25カ国でできたが、それがどれほどの効果があるのかは疑問が残る。さらに統一通貨によって為替調整という手段が奪われた国の経済再建をどうするのかという問題も残ったままだ。それに統一通貨で競争力が弱体な国と一緒になることで結果的に輸出を伸ばしているドイツのような国をどう考えるのかという問題もある。もしドイツが一人勝ちのような状況が続けば、やがて米国や英国あたりからブーイングが出るかもしれない。

 米国は、雇用情勢が大きく改善しつつあることが安心感を与えている。新規失業保険申請件数の4週移動平均は、先週の段階でリーマンショック以前の水準に戻った。これまで米国は「雇用なき景気回復」と言われてきただけに、このまま雇用環境が改善すれば消費にも好影響を与えるだろう。残された問題は住宅価格である。

 もっとも米国が明るさを取り戻す一方で、中国経済の減速は気になるところだ。今年の成長率が北京政府が最低限の目標とする8%を維持できるのかどうか、欧州の動向次第では急ブレーキがかかる可能性もあるという。日本と違って内需に伸びしろがあるとはいえ、この1月にはインフレ率が市場の予測を上回って高まった。もしこの状況が続けば、金融を緩和することができなくなる恐れもあり、そうなると成長率が下方にぶれるかもしれない。

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