なぜ人は商店街を訪れるのか? “高架下開発”の2つのアプローチ郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2012年02月16日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

アメ横からアキバへのグラデーション

 昔、この辺り一帯は“職人の町”だった。製造や製造卸が集積し、「まいど!」「もうかってまっか」が飛び交う東京の横丁であった。余談だが、僕は自転車でここを走っていた時、はさみを拾ったことがある。ただのはさみではなく、服地職人が使うプロ用裁ちばさみ。職人の街の香りが漂っているのだ。

 2k540を中心としたエリアを、空から見てみよう。

 北には活気あふれるアメ横のお店群。2k540の北端にもその匂いがする店がチラホラ。東は職人の下町で、僕らも馴染み深い木箱屋や印刷屋、ギャラリーがある。大会社は凸版印刷くらい、中小企業ばかり。

 西は末広町の交差点を中心に、その北ブロックにはアートギャラリーの「3331 Arts Chiyoda」や湯島天神、南ブロックには神田明神がある。チラホラとお参りする人々がやってきては柏手を打つ。

 そこからさらに南の外神田へ行くと、メイドやオタクが行き交うサブカルチャーの町に変身する。外人写真家がカメラ撮影している様子もよく見かける。雑踏を抜けて秋葉原駅前へ行くと、秋葉原UDXやタイムズタワー、ダイビルなど瀟洒(しょうしゃ)な再開発ビルが立ち並ぶオフィス街になる。と思えば、駅前の高架下にはAKB48カフェやガンダムカフェが存在感を示している。

 ぐるっと回って、2k540に戻る。蔵前橋通りをはさんで、2k540の向かい側に、業務用スーパーのハナマサがある。生活感あふれる商品群を目にしたら、非日常感が崩れてしまいはしないか。2k540の開発者もきっと悩んだことだろう。でも待ってくれ。覚えている人は少ないだろうが、この辺りにはかつて神田青果市場があった。セリや仲買が盛んに行われていた商いの地。ハナマサはその名残りとも言える。

 2k540のある高架下に積もるのは、「職人たちのものづくりの街」だけの歴史ではない。アメ横からアキバへのグラデーション、商業とエレキのチャンポンという、今昔の文化のごった煮がある。

 2k540の開発ではその土地の記憶をあえて消した。アメ横のわいざつさもアキバのサブカルもどちらも外した。それで良かったのか? 2タイプの店舗群をグラデーションをかけて誘致する手もあったと思うのだが……。

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