「世界=自分が知っている範囲」であるならば、個々人が認識する世界は、その人が「どの程度知ろうとしているか」という意思や勉強量、経験量に依存します。
例えば、世界に貧しい人たちがいることを知らない間は、日本でのほほんと暮らすことができます。これを「ステップ1」としておきましょう。
しかし、海外に行き、「驚くほど貧しい国がある」と実際に見聞きすると、いきなり問題意識が高まり、開発経済学を学んでみたり、海外ボランティアに参加し始めたりする人が現れます。知っている世界が広がり、行動が変わる。これがステップ2です。
さらに学びの範囲が広がると、非営利団体の非生産性や、支援側の国際機関が極めて官僚的な組織であること、国際援助の現場にも政治の駆け引きが渦巻いている、といった現実も知ることになります。
それらの新たな世界を知ったために、国際援助の仕事ではなく、自分の国で普通に働き、経済的な付加価値を高める活動に自分の居場所を見つける人もいます。これがステップ3です。
さらに一部の人は「国際援助に非効率や政治的な側面があるのは事実だが、それでも自分はそんな環境の中で地道に援助を続けていこう」と思い始めます。これをステップ4とします。
人がこれらのステップのどこに位置するかは、それぞれの人が「知っている範囲=その人に見えている世界の様子」の違いによって影響を受けます。
ある人が国際援助に強い関心を持ち、ほかの人がそうでないのは、2人の価値観の違い以上に「2人の見えている世界が異なるものだから」という理由も大きいのです。
さらに興味深いのは、ステップ2にいる人が、より広い範囲が見えているステップ3の人に対して、「彼らが国際援助に興味を持たないのは、貧しい人たちの現状を知らないからではないか」と感じることさえあることです。
実際にはステップ3の人は、貧しい人たちの現状のほかに、それを援助する側の実態に関してまで知識を得てしまったために、自分の人生を別の場所に置こうという判断をしたわけです。しかし、ステップ2の人にはそんな世界は見えていません。
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