シンメトリー・ジャパン代表。米国系人事コンサルティングファーム、ワトソンワイアットで、成果主義人事制度の導入に尽力。欧州留学を経て、社会人向けMBAスクールのグロービスの立ち上げをリード。2006年、経営学の分野で有効性が実証された教育手法を使い、「情報の非対称性」を解消することをミッションとしてシンメトリー・ジャパンを立ち上げる。
米国では社会人向けの人材育成の一環としてオンライン教育が定着していますが、人気講座になるととてつもない数の受講者がいます。その数、何と10万人以上。
この、大量の人が同時に受講できるという側面を指して、教育の「マッシブ化」と言われていますが、さらに詳しく見るとビジネス教育を大きく変えるインパクトがありそうです。
まずは素朴な疑問から始めましょう。なぜ1講座に10万人を超える人が集まるのでしょうか? 答えは「人気講師」「最先端のコンテンツ」「無料」の3点です。
例えば、UDACITYの「検索エンジンを作ろう (Building a Search Engine)」という講座を教えるのはグーグル・フェローとスタンフォード大学の教授。次の講座紹介動画を見ただけで、エンジニアを志す人ならば心ひかれるのは間違いないでしょう(ちなみに動画にはグーグル創業者のセルゲイ・ブリン氏も推薦者として登場します)
そして、受講料は、無料。名前とメールアドレスを登録するだけで、ビッグネーム2人が教える動画と膨大なボリュームのテキストにアクセスできるのです。これならば、世界中から数万人単位の受講者が集まるのもうなづけます。
……といっても、提供者側も決して社会貢献のためにボランティアで行っているわけではありません。
ここに、教育のマッシブ化の第2のポイントがあり、受講者に課金するという従来型の教育のビジネスモデルを変革しようという試みです。
例えば、10万人を超えるユーザーがいるということは、同じような興味を持つ人が集積しているということであり、彼らをターゲットにした広告モデルが成り立つのは想像に難くないでしょう。
そしてもう1つ、教育というサービスの特性として、登録者ひとりひとりのスキルレベルが詳細に把握できている点も見逃せません。
最終試験のスコアでスキルの修得度合が分かりますから、優秀な人材にスカウトメールを出して、採用をしている企業に紹介するという、極めて効率的な「人材紹介モデル」が成り立つ可能性があるのです。
ただし、この講座の提供者はベンチャー企業で、上記のモデルはまだ試行段階。とはいえ、ベンチャーキャピタルからの出資も受けているようなので、「このモデルはいける」という一定のコンセンサスは得ているのでしょう。
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