リニアの足を引っ張っているのは、誰なのか?杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)

» 2012年05月11日 08時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 資産を持っている人が、その資産の生かし方を真剣に考えず、機関投資家に丸投げする。だから、未来を見据えた「生きたお金」が出てこない。「リニア計画には夢もある。希望もある。投資は回収できる」とJR東海はいう。しかし、単年度で利益が出なければ、投資家には魅力がない。

 日本の将来に期待し、事業に夢を託してくれるという「本来の意味の投資家」はもう存在しないのか。私は、存在していると思っている。どこにいるのかといえば、全国どこにでもいる。銀行にも株にも手を出さず、お金はあっても使い道がない人。手元に死に金を保持して、途方に暮れている人たちである。有り体に言えばタンス預金だ。なんだ、主婦のへそくりや老人の蓄えを当てにするのかと笑うかもしれない。しかし、タンス預金は侮れない。

タンス預金でリニアを作れ

 使われないままタンスに眠っているお金はどのくらいあるのだろうか。日本銀行が2008年に発表したデータによると、タンス預金は30兆円。1995年には5兆円ほどだったので、この十数年で大幅に増加している。タンス預金が増えた背景には、90年代の後半の金融システムの不安や低金利局面が続いていることなどがある。

 バブルがはじけて以来、GDPはさほど増えていないし、景気は低迷している。経済が鈍っているというのに、現金は増えている。経済学の基礎で言うと、生産量が同じで現金が増えればインフレになるはずだ。しかしご存じの通り、世間はデフレ傾向である。

 一方、クレジットカードや電子マネーが普及しており、人々の財布の中の現金も減っている。いったい、日銀が出荷した紙幣たちはどこへいったのだろうか。タンスにしまったまま市中に出てこないから、インフレにならないで済んでいるとは考えられないか。

 銀行に預けても金利は低い。株式は電子化の流れとなり、お年寄りどころか私も仕組みがよく分からない。そこに嫌気したお年寄りはたくさんいそうである。このさい現金のほうが安心だし、使い切れなくても、現金なら遺産譲渡も簡単ではないか。

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