なぜ新幹線は飛行機に“勝てた”のか新連載・どうなる? 鉄道の未来(1)(3/7 ページ)

» 2012年05月16日 08時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

大塚:杉山さんは新幹線が飛行機に勝った理由のひとつに、「自由席」を挙げられました。これは興味深いですね。2011年3月に、東北新幹線東京〜新青森間で「はやぶさ」(E5系)がデビューしました。この「はやぶさ」にはグリーン車の上のクラスとして“ファーストクラス”を設けました。その名は「GranClass(グランクラス)」。

 しかし私は、JR東日本の幹部にこのように言いました。「グランクラスはいらないので、自由席を作りませんか?」と。なぜこのような話をしたかというと、今、格安航空会社(LCC)が台頭してきています。今年だけでも「ピーチ・アビエーション」が就航し、「ジェットスター・ジャパン」(7月)と「エアアジア・ジャパン」(8月)が就航する予定です。

 今のところ成田、関西空港と大都市をそれぞれ結ぶ路線が中心ですが、欧州の事例から今後を予測すると、広がっていくのは時間の問題。LCCと競合する路線では、JALやANAは航空チケットの値下げに踏み切るでしょう。そうなれば新幹線が激化する価格競争に巻き込まれるのは不可避となる。新幹線が航空機と対抗できる強みのひとつは「自由席がある」ことだと思っています。

 例えばビジネスパーソンであれば、どの新幹線に乗るかは決めてないけど、とりあえず自由席を購入する人も多いはず。ところが今の「はやぶさ」では指定席しかありませんので、自由席を買えません。もちろんグランクラスは良いスペックで、快適に移動することができます。ですが、忙しいビジネスパーソンにとっては過剰な装備よりも、時間を優先させたい。つまり「自由席」で移動できることが大事なんです。

 考えてみれば、「のぞみ」がデビューしたときも全席指定でした。しかし、その後は自由席を設けました。この自由席を設けたことで、飛行機に流れる客を食い止めたのではないでしょうか。

N700系(撮影:杉山淳一)

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