ボランティアってどんな気持ちになるんだろう?郷好文の“うふふ”マーケティング(1/2 ページ)

» 2012年08月02日 13時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 こんなにたくさんのミニトマトを洗うのは人生初。外資系スーパーマーケットのミニトマトパックはアメリカンな約900グラム。賞味期限切れで一部が傷みだしてはいるが、そこを取り除けば充分食べられる。パックを開ける。ヘタを取る。大ザルでザッザと洗う。外資系金融機関に勤める男性とシンクに並んで、ひたすら洗った。

ミニトマトミニトマト

 セカンドハーベスト・ジャパンは、賞味期限が近づいたり廃棄されたりする食品を児童養護施設やDV被害者のシェルター、路上生活者、そして被災地からの避難生活者に届けるフードバンク活動をしている。毎週金曜日は、翌日の「スープキッチン」――路上生活者のための炊き出し準備の日だ。

ボランティアリーブを知っていますか?

 私が取り除いたトマトをすくいあげたシニアが言った。「これは大丈夫。調理時にもチェックしますからなるべく捨てないで」。私の「モッタイナイ廃棄」を指摘したのは、ボランティア歴7年の元校長先生だ。定年後各地を旅して、65歳から毎週金曜日と土曜日にはボランティアに来る。今72歳。

 トマトを洗っているといろいろ考え出す。こんなに捨てちゃだめ。食品業界の1/3ルール(賞味期限が残り1/3になると、売り物にならないので廃棄)はオーバーだ。コンビニエンスストアもスーパーマーケットも便利すぎ。パックじゃなくて量り売りをすればいい。農家さん、メーカーさん、捨ててごめん。いや地球よ、ごめんな。

 「洗い組」のボランティアは2組6名と私。6名のうち外国人が半分、英語ぺらぺらの日本人が半分。要するに外資系企業人が目立つ。なぜ外資の人が多いのか。

 「ボランティアリーブがあるんですよ」――聞けば年に3日、リーブ(休暇)があるという。消化率が低いと「なぜ?」と問われる。欧米では税制面の恩恵もあり(寄付控除がある)、法令違反をしても寄付やボランティア実績があると罰則が緩和されるケースもある。

 日本企業にはリーブはないか、あっても活用されていない。「ボランティアリーブ」で検索しても大した情報はないが、「volunteer leave」ならばゴマンとある。

ゆでたまご

 だが参加しているのは外資系企業人だけじゃない。主婦もいれば学生の姿もある。みんな生き生きしている。かくいう私は前回記事で取材した人に「誘われて」来た。「ボランティアってどんな気持ちになるんだろう? を自己取材しよう」と思った。

 卵を大鍋でゆでる。「すごい量だ」とつぶやくと元校長は言った。「600個、これでも1人1個ですよ」。500人ほどがスープキッチンを楽しみにしている。メニューはスープとサラダとゆで卵。喜ぶ顔が湯煙の向こうに見える。喜ぶ人がダイレクト、それがボランティアの良さ。

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