原発事故の責任は誰にあるのか メディアは追及しなければいけない さっぱり分からなかった、3.11報道(最終回)(4/5 ページ)

» 2012年08月04日 00時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

情報リテラシーデバイド

烏賀陽:過酷な時代になってきましたよね。どのメディアが信用できて、どのメディアが信用できないという見極める力は、都市部にいる人、インターネットをつかいこなす人は比較的養われているんですよ。

 しかし地方に住んでいる高齢者にその力があるかどうかというと、ない。そもそもインターネットをうまく使いこなすことができません。リテラシーデバイドがいま生まれています。例えばTwitterを見てまめに情報をチェックしている人と、NHKと朝日新聞しかみないという高齢者とでは、現実認識にものすごい差が出ていて、話が通じない。これはまさに「デジタルデバイド」の次に来た「情報リテラシーデバイド」なんですよ。

 本当はそれを食い止めるのが報道の仕事でした。弱い人に対しても分かりやすく情報を伝える――リテラシーギャップを埋めるというのが報道の仕事だったのに、それもできなくなっています。ある意味、情報の純粋自由主義みたいな感じですね。弱肉強食、強者生存のダーウィン的な世界です。

 ITのリテラシーギャップというものが、知識のリテラシーギャップになってしまうかもしれません。テクノロジーが進歩すれば人間は幸福になるはずだったのに、どうもそうはならないような気がします。

 昔はNHKを見たり、新聞を読めば、そこに一応の真実みたいなものは提示されているという、やさしくて簡単な時代でした。それが今では、木っ端みじんになってしまった。

相場:「もう元には戻らない」といった声が多いですよね。

烏賀陽:絶対に戻りません。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.